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小箱の小話
東方二次小説が多目。 エログロ、ホラーミステリ洗脳色仕掛け等。
ショタフランちゃんとさとる君
「ほらフランちゃん。んっ、ちゅっ、ちゅ」
「ああ、駄目さとるくぅん……」
 ここは地霊殿カンパニーの一室であった。二人の少年がほぼ全裸の状態で、甘い嬌声をあげながら互いの体をまさぐりあっていた。
 積極的に接吻を繰り返しているのは古明地さとるである。桃色の癖のある髪の毛がショートでふわりと首筋にやわらかくかかる。ややもをすれば奇異の目で見られがちな頭髪の色も、このさとる少年の魅力をもってすれば、それはあまりにも妖しげで蠱惑的な容貌がぐるぐると融合し、悪魔的な吸引力となるぐらいの危うい色彩であった。
 雪のような白い肌も相まって彼の美しさを際立たせる。しおらしく中性的で少女にも少年のどちらにも属さない、それでいて両雄の際立つ部分を美味しく抽出しているのである。眉目秀麗の精緻な黄金比が、骨格のみならず内臓血液にまで行き渡る完成された美の象徴であった。
 彼はまさしく自由奔放で身勝手であった。しかし誰にも止められない、止めようがなかった。初対面の人間は、天使のような愛らしい容姿にころりと騙されてしまう。そして十分に打ち解けた後、突如として牙をむくのだ。赤ん坊のような愛らしさも見せれば時には毒婦のような妖艶すぎる表情を見せた。周囲の人間のはころころ変わる態度に無理にでも翻弄される。子猫のように甘えてきたかと思うと、ぱっと親の敵かのように拒絶され突き放されてしまうのである。
 さとるは地霊殿カンパニーの由緒ある御曹司である。今までに何一つ手に入らないものはなかった。そしてまた新たな獲物を探そうと舌なめずりを始めていた、
「ねぇフランちゃん? もっと口……あけて?」
「あ……ん、うっ」
 今さとるに接吻を迫られているのはフラン少年であった。彼は名の知れた大企業である紅魔館の若すぎる跡取りである。過去に一時の栄華を極めた紅魔館も、今やその勢いは泣かず飛ばずであった。先代が没してからというもの、紅魔館の財政状況は常に逼迫していた。絵に描いたような手酷い自転車操業が、いつか崩壊するであろう朽ち果てた未来を如実に予言していた。
 現当主は代々から吸血鬼の血を授かったレミリアスカーレットである。フラン少年はその弟であった。金髪でルビー色の瞳が美しく映える吸血鬼。日常的に日の光を浴びない種族であるから、さとるにも負けず劣らず肌は白磁のように白く、まるで傷や染み一つなくなめらかであった。
「ふふっ。可愛いねフランちゃんは。僕なんかよりもずっと綺麗な肌だよ……」
「そっ、そんなこと……んっ」
 フランは首筋を舐められて、びくんと飛び上がった。さとるは仲のよい友達で、日ごろから遊びあう間がらであった。それが今やどうしてこんな関係になっているのかわからなかった。ある日、裸のままでベッドに押したおされて後はなすがままであった。何度も口付けをされて耳元で甘いささやきを繰り返される。そんな自堕落で倒錯的な日常が幾度も続いていた。
「んっ、はぁ……。ふふ。ねぇフランちゃん? 今日はもっといいことしよっか?」
「いいこと……?」
 うつろな目でそう言った。断る理由なんて何もなかった。幼く多感な時期の莫大なる未知への憧れが、フランの胸の内から溢れんばかりに持ち上がってきた。しかもその道を示してくれるのが並外れた美麗の少年であったから。軽い脳内の陶酔に酔いながら、とろんと細まった目でさとるをじっと見つめた。
「それはね……ここだよ」
 そう言って、さとるが触らせたのは彼の股間であった。手のひらの中で脈打つ鼓動。それはフランとっては不思議で甘い誘惑であった。
「えっ、あっ、ええっ?」
「ねぇ何回も僕と裸でこうしてて、気づかなかったの?」
「あ、あの……。僕」
 フランはまごついた。気づかなかったわけではない。性器が通常よりも肥大しているのは前々から感づいていた。しかしさとるの前で言うのははばかられていた。だってそんなこと恥ずかしくて――。
「ふふっ。ほらもっと触って? ほらほら」
「ああ……」
 誘導されてもっと触るように促されてしまう。ある種の濃厚な血液の胎動が、手のひらを伝わって自分にも流入してくるような心地がした。しだいにさとるの性器が大きさを増していく。怖いとは思わなかった。それより、いとおしく温かみのあるような安堵に似た感情の方が勝った。
「気持ちいいよフランちゃん。ねぇフランちゃんも気持ちいいの?」
「うっ……」
 心を見透かしたようにさとるが聞いてくる。気持ちよくないと言えば嘘になる。実際に気持ちよすぎて心が破裂しそうであった。そしてさとるも同じようにこの心境を共有していること、そのことに奇妙な一体感と踏み込んではいけない背徳感とが交じり合った倒錯的な感情を抱いていた。
「いいんだね。うれしい……。ちゅ、ちゅ、んちゅっ」
「ふぁ、ちゅ……ちゅっ」
 脳がとろけそうになりながら接吻を受け入れる。赤い舌を吸いながら滴る唾液を淫靡にからませる。白い石膏像のような顔面が視界を覆う。滲んだ瞳孔から電流が迸り甘い疼きを送ってくる。
「さとるくぅん……もっとぉ……」
 ついにフランは自分から甘えを開始してしまった。彼は美しかったし、何より胸の高鳴りが止まらなかった。
「もっと? じゃあお返しだよ」
「はぁっ」
 予期せぬ事態にフランは目を白黒させた。自分の性器をさとるの小さな手のひらでわしづかみにされたからだ。
「あ、ああ。やめて」
「やめて? 何で? さっき僕のも触ったでしょ?」
「でも……」
 と抵抗してもさとるはやめなかった。指の腹でさするように優しくフランのシンボルを撫ぜてくる。それはリミズカルに竪琴を弾くような優雅で神話的な官能の調であった。
「はん、あん、あふぅん」
 フランは思わず声を出した。くすぐったいようなむずがゆいような感触に、背をぴんと反り返らせてもだえる。
「ほら、フランちゃんのもどんどん固くなってきてるよ? 僕の手の中で……」
「えっ? あんんっ」
 事実、フラン少年の幼い突起は天井を向いて硬直していた。歴戦の猛者のような荒々しい様子は皆無で、今まさに希望を胸に抱えた少年らしい若々しい生命の躍動であった。
「これで僕と同じだね……。魔性なんだよこれ。わかる?」
「えっ、魔性って?」
 手で優しくシンボルをしごきながら、さとるが聞いてくる。
「魔性は魔性だよ。狂っちゃうんだよ。みんな。僕達にはその権利があるんだよ。わかる? フランちゃん?」
「あっ、うん。わから……ないけど。んっ気持ちいいよぉ……」
 さとるの言っていることは理解できなかった。けど性器の根元から、快感が脳髄を伝わって押し寄せてくるのがわかった。美麗すぎる少年の手でフランは性の喜びを享受しようとしていた。
「僕のも触って? 今度はお互いね……ほら」
「う、うん」
 胸を合わせるようにして、互いの性器を握り合う。自然と顔が近づき舌をからめて唇を吸いあう。さっきよりも何倍もの快感が全身を貫く。少年達は魅惑の甘い香りが漂う鳥かごの中で、禁忌の魔性に満ちた痴戯に没頭してしまった。魔女達の執り行う悪魔的崇拝に似たサバトの儀式。それがこの未成熟な白い肉体同士で完成されようとしていた。
「あ、はぁ、何これぇ。さっきとぜんぜんちがうぅう!」
 フランは大声をあげて快感をむさぼった。濃密な時の流れの中で、二人の肉の語らいは淫らに燃え上がっていった。
「僕もすごくいいよフランちゃん。んっ、あん。もっとしごい……もっと……」
 促されて性器をさする手を早める。そうすると呼応するようにして、火花が散るほどのスピードでしごかれてしまう。汗が飛び散り艶かしい体に彩りを添える。淡い体臭も甘いフェロモンとなり理想的な魅惑の芳香へと昇華していく。前歯と前歯ががつんとぶつかりあう。獣じみた肉の饗宴。狭い檻の中で媚肉が熟成されて豊潤な香りを放ち、食べごろの今を迎えるまで一直線に突き進む。
「んむっ、んっ、んっ、すごいよフランちゃん。僕感じてるぅ……ねぇ、ねぇ……」
「ああん。僕もそうだよさとる君。今まで感じたことのない……ふあぁあ」
 限界まで上り詰めた愛の炎が、有頂天に達しようとしていた。皮をかむったままの未熟な性器がびくんびくんと激しく脈動する。
「あーっ。何かくるようさとる君」
「んっ……ねぇ一緒に」
 本能的に備わっている感覚で、審判の時を予感する。濡れた性器の先をつつき合せながらその時を待つ。
「んんっ。さとる君。そんなに先っぽぉ……駄目ぇっ!」
「フ、フランちゃんの方こそそんなにっ……」
「あっ、くるくるっ! 奥から……んぁーっ!」
「僕もぉ……いくよぉ……んっ!」
 極限の官能が血液から脳内物質となり全身をかけめぐる。雷に打たれたようにしびれ、髪を振り乱し背中をそらせて性の喜びをかみ締める。白くねっとりした濃い液体が腹部にべっとりとからみついていた。
「んぅ。はぁはぁ、はぁはぁはぁ……」
「はぁ……はぁ……」
 息を落ち着けてみる。フランは自分の性器から、何か得体の知れない、尿ではない別の液体が放出されたのを感じとった。濃厚などろりとした白いものが、フランとさとるの間に蜘蛛の糸ように巣を張っていた。
「ふわ。何これ……」
 フランがそう聞いたが、さとるはにやりと一つ笑っただけであった。直後に、何かつんとくるような何とも言えないような、いやらしい香りが周囲を満たしていく。
「これが僕とフランちゃんの愛の結晶だよ? ほら……ぺろん」
 指に白い液体をすくいとって、さとるはちゅぽんと音をたててしゃぶった。
「ああん。そんなの汚いよさとる君……」
「どうして? ふふっ」
「どうしてって……」
 自分の性器から沸いて出たもの。フランがそう思うのは至極当然のことであった。
「美味しいよこれ。ねぇフランちゃんもどう?」
「えっ、ああ……」
 さとるがあまりにも美味しそうに頬張るので、それならばという思いにかられてしまった。自分のお腹から白い液体を指にとる。やはり漂う香りが嫌悪感を催す。さとるの方を見る。笑顔でこたえられる。その笑みに助けれて、フランは意を決して指を口に入れた。
「んむんむ……。べーっ。やっぱり美味しくないよ……。どろどろで……なんか変な味……」
「ふふふ。そうかな? でも……こうすると……んちゅっ」
「んっ、やめ……むぐっ」
 避けようとしたが避けられなかった。さとるはあろうことか、白い液体を口にふんだんに蓄えたまま口付けを迫ってきたのだ。気持ち悪いような濃厚な触感が、強制的に口の中にひろがってしまう。
「どぉお? フランちゃん? んむ、んむむ」
「んっ、んっ、んんーっ」
 絡みつく舌、広がる匂い。唇を吸われて歯茎の溝を舐められながら、白い液体を塗りこむように丹念に愛撫してくる。
「僕の白いので粘膜をコーティングしてあげるね? だからフランちゃんも僕にお返ししてね? んちゅっ」
「ふぁ、はーいさとる君……んちゅ、んちゅ……」
 キスをされるともう何もかもどうでもよくなってしまう。フランは思考を支配されるような心地がした。好き。さとる君が。好き、好き、好き。
 期待に応えるように必死で頬を舐めたり口内に舌を這わせた。もはや嫌な匂いも気にならなくなっていた。あるのはこの狭い密室の中で、もっと倒錯した快感を共有したいということであった。 
「あむはむ、んむぅん、んむ、んむっ」
「あ……ふぅん……そこぉ……。もっとさとるくぅん……」
 フランは少女のような声を出して甘えた。さとるに心酔したまま、心を支配されて更なる甘美な陶酔に堕落してしまいたかった。
「そんな声出して……フランちゃんたら。ねぇ……またここ固くしているんでしょ? 白いのぬりこんでぇ……。ほら、これでもう一回しよ? ね? ちゅ」
 頬に優しくキスをされ、性器に妖しく指を絡められてしまう。フランの心は再び沸き立った。鼓動が熱く、燃え滾る若き剛直が快楽を貪欲に欲していた。
「うん。もう一回……ああ。僕どうなっちゃうんだろう……」
 そんな疑問を口にするフランを、慈愛に満ちた目で見つめてくる。
「大丈夫だよフランちゃん。僕の色に完全に染めてあげるから」
「あ、はぁい。さとる君……」
 そのまま押し倒されてしまう。お腹の上で性器がぐにゃりと蠢き胎動を始める。またもや白い宴が開始されていく。精神にも肉体にもその快楽を塗りこめられて、従順な奴隷となるべく定められた思考回路を形作る。意のままに操られるとわかっていても抵抗できない。むしろ隷属することが自分の幸せにすりかえられていく。
 猛った若茎がねっとりとからみ涙を流す。むっとする匂いが脳内を満たし、軽く絶頂の臨界点を越えさせようとする。ふとさとるとぴったりと目が合う。笑いかけられる。その笑顔に魂全体を魅了されてしまう。
「ほら、また出すよ……」
「もっと、もっとぉ……」
 フランは押し返しては満ちる性の波の逢瀬を感じながら、ベッドのシーツをぎゅっと握り締めた。


「ふぅいいシャワーだった。フランちゃんも一緒に浴びればよかったのにね。ふふふ」
 ひとしきり行為を終えた後、シャワー室へ行ったさとるが戻ってきた。手には冷たそうなオレンジジュースが握られている。
「そ、そんな……。あの……」
「どうしたの? ねぇ?」
 にやにやしながらさとるが隣に腰を下ろす。
「あっ……」
 フランは気恥ずかしそうに顔を背ける。
「いけないことしちゃったって思ってる? でもまだまだこれからなんだけどね。ねぇフランちゃん……僕の頼み聞いてくれたら、もっといいことしてあげてもいいよ? くすくす……」
「あ、はぁ……。い、いいことって?」
 いけないと思いつつも、そうたずねてしまう。隣でさとるの体温を直に感じる。さっきまでのもやもやした匂いとは違い、清冽な澄み切ったような匂いがする。ずっとそばにいていたい。男同士でも、友達を超えて、恋人のように。
「へへっ。なーいしょだよっ。それより僕のいうこと聞いてくれる? ねぇ僕の可愛いフランちゃん……」
「う、うん……。さとる君のためなら、僕なんでも……」
 僕の可愛いの、『僕の』という箇所に言葉で表しようのない幸福感を感じてしまう。ひんやりとした手の冷たさで、そのまま頬を優しく撫ぜられる。
「じゃ耳貸して?」
「うん……」
 耳元に口が近くてドキドキする。美少年の甘い吐息に意識が飛びそうになる。しかしフランが聞いた内容は、とてつもなく常識外のことであった。
「ええーっ。そんな……こと、できないよ……僕」
「できないじゃなくてやるの。僕の……命令だよ? くすっ」
「あっ、はぁっ、。やる……やるから……」
 意地悪く笑うさとるの表情で、地の底まで落とされてしまう。もう離れられない。さとる君とは。
「じゃあ決まりだね。楽しみにしてるよフランちゃん。あはっ」
 肩をポンと叩くさとる。その横でフランは暗澹な面持ちで下を向いていた。





 十六夜咲夜は紅魔館のメイドである。そして今も巨大なビルの中でせっせと業務にいそしんでいた。主に忠実に、誠意を持って働く。彼女の信念は頑なであった。
「咲夜ーいる?」
「なんでございましょうかお嬢様?」
 廊下を歩いていると、主人であるレミリアから声をかけられた。一体何の用であろう。
「あの馬鹿弟がまだ起きてきてないの。起こしてきてね。ついでにこっぴどくしかりつけて欲しいわ」
「御意にござりまする」
 咲夜は深々とへりくだった。
「……あはっ」
 レミリアが立ち去ると、満面の笑みを浮かべてにやけた。
「まぁ……フラン坊ちゃまの……まぁ。私が……うふふ」
 少年愛嗜好というものがこの世には存在する。俗にいうショタ愛である。まぁ女性なら幼い少年を可愛く思うのも普通のことであるが、咲夜の場合は軽く時計の針を二十周ぐらい超えていた。少年、好き、そばにいたい、ほっぺをつんとしたい、愛したい、食べたい。ハメたい。体全体をぺろぺろしたい、というような俗世の煩悩にかられ過ぎていた。
「待っててくださいね坊ちゃまー。るるんるるるんるー♪」
 咲夜は足取り軽くスキップした。


「えーゴホンゴホン。フラン坊ちゃまー。いらっしゃいますか? まだお目覚めにならないと聞いて。私め、十六夜咲夜が参上いたしました」
 呼吸を整えて戸を叩く。この中で美貌の少年が寝息をたてて休んでいると思うと、鼻息が荒くなってしょうがなかった。そもそも咲夜が紅魔館ビルに勤めたのも、フラン少年が目当てであった。吸血鬼の整った容貌と凛々しい顔立ちに、一目みただけで魅せられてしまった。同じ建物の中にいるだけ、同じ空気を共にしているだけでも幸せであった。そして今一部屋で直接そばにいられる機会が運よく与えられたのだった。
「フラン坊ちゃま……。お返事がないのでしたら入りますよ……」
 咲夜は勢い勇んで部屋に転がりこんだ。息を吸う、吐く。すばらしい。こんなに素晴らしいことがこの世にあるだろうか。いやたぶんない。
「坊ちゃま……。あらまだベッドに寝ていらして……ふふ」
 隅のベッドへ向かって抜き足差し足で歩く。ああ、今ここに可愛らしい妖精が。いとけない顔立ちでこの世の穢れを知らない純真なナチュラルボーイが。
「坊ちゃま……ああ!」
 フランは体を横にしてその身を置いていた。白いベッドにサラサラと手入れのいき届いた髪がはらりとうちほどける。柔らかな頬を見ればふっくらとして健康そうで、すやすやと寝息をたてて夢見る天使のラッパはエデンまで鳴り響くかのように遠く儚い。
「あんなんてお綺麗な寝顔なんでしょ。このまま目覚めの口付けを……なーんて……。…………なーんて」
 咲夜はあたりを見回した。そうだ。お嬢様は起こせといった。だとすると、これもあながち間違っていないのではないか。そうだそうに違いない。
「フラン坊ちゃま……失礼します。毒りんごの呪いを今解いてあげますからね……」
 自己を正当化して、唇をんーと突き出した。坊ちゃまの赤い唇。ああ……後数センチ。はな、鼻血が出そう。
「ん?」
「ふぁ」
 鼻先数センチの所で、ぱっとフランの目が見開かれていた。それは驚愕といっていいのやらなんとやら。とにかく咲夜は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔になって後ろに退いた。
「ああフラン坊ちゃま。おはようございまぁす。えへ、えへへ……」
「誰?」
「すいません坊ちゃま。ご失礼しました。私のメイドの十六夜咲夜でございます。レミリアお姉さまのお言いつけでこうして……。どんな罰でも受ける覚悟でございます。ええ、ええ……」
「ふーん。まぁいいや。お姉さまによろしくね」
「ひぃ。はぁ」
 何とか難を逃れたようだ。咲夜はほっと一安堵した。 
「それでは私はこれで……」
 いい思いができて咲夜は満足であった。ああなんていい匂いなのだろう。あんな間近で少年吸血鬼の香りをかいで……。すべすべの肌……その天使のような寝顔……声変わりする前の純真無垢のスイートボイス。咲夜の妄想はこの世を一回転と半周を回った。
「待って」
「は?」
 フランが呼び止めた。
「僕のお世話をして。咲夜」
「いえ、しかし……」
 勝手に命令に背いてはお嬢様を裏切ることになる。しかし坊ちゃまの願いを無碍にするのも居心地が悪い。
「いいから。お姉さまには後から僕が言っておくから……ね?」
「は、はぁ……」
 パチッとウインクをされたので、咲夜はドキリとしてしまった。華奢な体、細い顎、涼しげな瞳。見とれずにはいられない、人間の上位種である吸血鬼のなんと美しいこと――。
「そっ、それでは何を……」
「脱がせて」
「はっ」
 予期せぬ言葉だった。
「脱がせて咲夜。僕、自分で服ぬげないの……」
 まさかそんなことがと思った。いくらなんでも二歳三歳の幼児ではないのだ。それなのにこんな願いをするとは。
「脱がせて……くれないの?」
「あ、ちょっと待ってください坊ちゃま。あの、その」
 上目遣いで妙な雰囲気で見上げられたからたまらない。少年の声色の中にも、どこか媚びるような甘えた調子が鼻にかかっていた。ああこれはまずいぞ。いくら自分がショタ趣味だからといって、こんなこんな。いけない。絶対にいけない。ここで手を出してしまったらどんな拷問を受けるかわからないのに。
「ねぇどうしたの? もう僕待てないよ……」
 胸元のパジャマのボタンが一つ外れていた。サイズが合ってないのかたぶついて余裕がある。幼い吸血鬼は肌着をつけていない。細い鎖骨が白い肌に浮き出ている。咲夜によく見えるように胸元がはだけ、平らな胸板に肋骨のなんともいえない滑らかな抑揚が、無邪気ながらも危険な色気をかもし出している。
「あ、あ、ぼっちゃ……ま」
「くすっ」
 フランは覗いてもいいよといわんばかりに、ぐっと身を乗り出して前かがみになった。桜色のぽちっとした乳首、そして奥の暗がりにあるおへそまで見渡すことができてしまった。
 咲夜は思考が混乱していた。何の戯れか主人の弟様に淫靡な誘惑を仕掛けられているのだ。何ということだろう。吸血鬼がただの人間を誘うなんて、もうその身を捧げろと言っていると同じではないか。ええ咲夜わかってるわ。自分は従順で瀟洒なメイド。こんな弟様のたわむれなんてしっかり諌めてしかりつけて、その律儀振りを発揮してやれば――。
「どうしたの咲夜ぁ。僕もう待てない。ほら、もっと僕の体見ていいよ?」
「あ……」
 そんな心のバリヤーも一瞬で粉々に打ち砕かれてしまった。艶っぽく、情のこもった声に脳がぐらりと揺れる。もう目の前にいるのは主人の弟ではなく、ただの淫らな娼婦にしか見えなくなっていた。男でも娼婦。幼さをこれでもかと見せびらかして、悪魔的な手練手管により客を射止める手馴れた少年の娼婦であった。
 口角を上げてにやりと笑う仕草、嗜虐的ではるか上からゴミを見下ろすかのような視線に、咲夜はしおしおとしてもんどり打って倒れこみそうになりながら耐えた。
「はぁ、坊ちゃま。いけません。いけ……ません。どうかご容赦を……。後でお嬢様になんと……」
「ふふ。そんなのいいから。ねぇ咲夜? 君さっき僕のほっぺにキスしようとしてたでしょ? これお姉さまに言ったらひどいよ? ばらしても……いいの? ふふっ」
「あ、それは……」
 ああ起きていたのだ弟様は。すべてわかっていた上でこんなことを。だとするともう逃げ場はない。咲夜の心を絶望の重い帳が覆った。一体どうすればいいのか。どうせ吸血鬼に食べられるぐらいなら、性的にその身を蹂躙されて辱められてぐふぐふ。
「どうしたの? 聞こえなかった? 大丈夫だよ? 僕人間の扱いには慣れているんだよ? ほら来て……咲夜」
 フランが両腕を広げて迎え入れようとしていた。咲夜はその姿にすっかり魅了されて一歩歩みだした。
「はい……。どうか優しくしてくださいね弟様。えへ、えへへ……」
「来て」
「はぁい……」
 咲夜は目をつぶってまっすぐ歩いた。ああなんて短い人生だったの。でもこんな美少年の手で命を閉じるなら本望だわ。ああ十六夜咲夜の人生に一片の悔いなし。なんて瀟洒で素敵な一生だったのかしら……ああ。
「ああ……」
 三歩四歩と歩く。あれベッドの弟様はこんなに遠かったかしら。……どこ? 弟様? そのまま一直線に直進する。
「あんっ!」
 おでこに痛みが走る。さすりながら目を開けると、紅い壁にぶつかったらしいことがわかる。
「うわー、こんなのやっぱり恥ずかしいよー。やだーもう! もー早くでてけよー。鼻の下伸ばしていやらしいんだよお前はっ! 早く早くっ!」
 フランが我を忘れたように騒いでいた。あれ? どうしてこんな展開になるんだろう? 咲夜の頭はとてつもなく混乱してしまった。
「あ、あの……」
「出てけったら! このー!」
「うぶ」
 大きな熊のぬいぐるみが顔面にクリーンヒットした。何が何だかわからないがどうやらここから消えて欲しいらしい。
「はい今すぐに。失礼いたしましたっ!」
「もう二度とくるなよー。このスケベメイド!」
「ひぃー!」
 間一髪で猛獣のいる部屋から抜け出た。後数秒遅かったら何をされるかわからなかった。性的にではなく、暴力的にその身を八つ裂きにされてしまうに違いなかったから。 




 所かわり地霊殿カンパニーの一室である。フラン少年は手枷をはめられて、壁にその身を貼り付けにされていた。
「ねぇフランちゃん。メイドを誘惑しろって言ったじゃん? どうしてちゃんとできないのかな? ん?」
 さとる少年が鞭をぴしりと叩く。黒光りするブーツ、ガーターベルト、股間の切れ込みが深いボンテージ姿。露出度が高く目のやり場のないくらい扇情的な容姿であった。がしかし身に付けているのが年端もいかない少年であるのは、なんともいえないちぐはぐさではあったが、それがかえってある種の官能的な美を集約されているのかもしれなかった。
 細い体にぴったりと着用されたそれは言わばアーマーである。雄雌ともどもをごく自然に欲情させるための積極的な武器と言ってもいい。女子は言う及ばず、もし一般的な男子がこの少年と相対したならば、指一本も動かせないほどの強烈な蠱惑でその身を焦がし、財産も家族友人全ての縁を捨て去って、足先をぺろぺろ舐めて忠誠を誓うことが普通に予想された。
 あどけない顔の少女と倒錯しても十分過ぎるほどの倒錯であったが、彼はさらに上をいく美少年であった。わざとらしくしなを作ったり、意味ありげに目を細めて流し目を送る仕草も非常に卓越していた。下腹部にすりよられて目を潤ませながら甘い懇願を受ければ、どんな男女も正気を保っていられないのは確かであろう。
「う、あのね僕。ちゃんとしたんだったら……本当だよう」
 涙ながらにフランは訴えた。もう既に体全体に痛々しい鞭の痕が刻まれていた。
「嘘。最低でもキスまでしろって言ったんじゃん。ねぇ……僕に嘘ついたらどうなるかわかってるよね?」
「あんっ!」
 おでこにがつんと頭突きをされる。そのまま鼻の頭をぺろりと舐められた。
「僕には何でもわかっているんだからね。ね、君の大切なお姉さまがどうなってもいいのなら……ふふ」
「お、お姉さまをどうする気? 駄目だよそんなの……」
「フランちゃんは黙って僕のお人形さんになってればいいの。ほら、今日もいけないことしちゃうよ?」
「ふぁ」
 ブーツの踵がフランのペニスにめり込んでいた。反り返って硬度のある肉棒に、めりめりと圧迫が加えられる。
「いた、やめて……」
「痛いのもじきよくなるよ。でも、そんなにこれが嫌なら別のことしちゃうね」
 と言って、さとるは鞭をしならせてペニスに一気にぐるんと巻きつけた。性器全体をすっぽりと覆う淫靡な鞭の感触。その奇妙な圧力に異常なほどの恐怖を感じてしまう。
「あぅ……」
「いいでしょこれ? ほら……このくらいがいいのかな?」
「ああっ」
 鞭を引っ張られると、再び圧迫はきつくなる。フランはうめき声をあげてその窮状を訴えた。
「きつすぎたみたいだね。じゃ……ちょっと優しくしてあげようか」
 再度緩まる。優しく――。なぜかその言葉に危険な罠、何か裏があるような気がしてならなかった。
「ふふっ。この鞭はペットをしつけるのにとっても役にたつんだよ? 伸縮自在の優れものなんだから」
「はぁ、はぁ、はぁぁ……」
 フランは甘いあえぎを漏らす。不安と倒錯した快感が入り混じった声だった。
「怖いの? じゃ、その顔もっとゆがませてあげる」
 そう言ってさとるはフランの顔の前まで股間を持っていく。
「ほら僕のオチンチンこんなになってるよ? 君のせいだよ? 君がそんな顔するから……僕ぞくぞくして」
 黒のパンツの中で、その盛り上がりは最高潮に達していた。フランは次に何をしたらいいか大体わかっていた。怒張する魔性の性器。それに報いなければならない。
「ほら見て」
 パンツをずりさげると、ぴょこんといきりたったペニスが顔を覗かせる。大きさはさほどでもないが、十分過ぎるほどの圧倒的な威圧感を誇っていた。
「好き。フランちゃん。わかるね?」
「うん……」
 こくりとうなづいて大口を開ける。フランはそれを受け入れようとした。
「自分から咥えてよ」
「はい……」
 舌をれろっと出して先っぽを絡めとろうとする。だが届かない。
「もっと舌伸ばして」
 必死に首も伸ばして舌を伸ばす。千切れそうなほど努力の結果、ようやく舌先がピンク色の亀頭の頭に張り付いた。八割ほど皮がかむった形状は、幼さの象徴でもあった。
「やっとできたね。さっ、僕を大人にして」
「大人って?」
「大人は大人だよ。フランちゃんにも後でしてあげるから……ほら」
「んむっ」
 やおらペニスを突っ込まれる。つーんとしたチーズ臭い匂いが口腔内にむわぁと立ち込める。
「んー、んんー」
「ふふ。初めてのおちんちんの匂いはどうだい? 美味しい?」
 フランの答えも聞かずにさとるは奥までピストンを繰り返す。じゅぽじゅぽと卑猥なストロークの音が狭い密室に響いた。
「ふっもういいかな。ほら君のよだれでやわらかくなったよ?」
 唾液でどろどろになったペニスを見せつけられる。確かに先ほどよりもぬるぬるとすべりがよくなっているようだ。
「あ、ふぁ……」
 フランは半ば陶酔していた。男同士で性器を舐めるなんて拒否すべきはずだった。しかし今はごく自然にその事実を受け入れてしまっている。少し変わった味のペニスもちょっと趣を変えてみれば美味しかった。何よりさとるのペニスを舐めていることに著しい愉悦を感じていたから。征服される快感。それも自分よりも美しい存在に圧倒的な力で押しつぶされる。フランはそんなマゾヒズムに没落しておとしこまれた。
「これからもっといいんだよ……ほら見て」
「あっ」
 最初は何をしているのかわからなかったが、しだいにその状況が理解できた。さとるは自分でめりめりとペニスの皮をむいていた。淡いピンク色の部分が領地を増していく。綺麗だな、とフランは心からそう思った。美少年は排泄機関さえもかくも美しいのだろうか。
「どうしたの? ほら見とれている暇なんかないよ?」
 ぼっとしているとさとるが声をかけてきた。皮はほとんど全部むけるところまでむけている。痛くはないのだろうかと思った。さっきまであんなに厚着をしていたのに今はとても寒そうである。
「大丈夫なの……それ?」
「ん? 心配してくれるのフランちゃん。ありがとう君。僕は大丈夫だから……。ほらそれより……これ綺麗にしてよ」
「えっ……」
 さとるが指し示したのは、亀頭の傘の部分に黄色くこびりついたような不思議な固形物であった。よくよく見ればそれはびっしりと、香りが一段ときつくなる。そうだこの匂い、舐めている時もいつも感じていた。
「皮の裏にたまっているんだよこれ。だから綺麗にしなくちゃね。僕はフランちゃんにこれをしてもらいたいんだ。好きだから……」
「えっ」
「大人になるってそういうことだよ。これは儀式なんだよ。ね、フランちゃん。フランちゃんのも後でしてあげる。だから今は……」
 ふと見上げるとさとるの優しい顔が確認できた。こんなにも優しい顔は見たことがなかった。
「舐めて……フランちゃん」
「うん」
 水分が少なくて固まっているような気がしたので、舌に唾液からめてから作業を開始する。
「んっ、んっ、ん……」
 舐めとった感触はあまりよくない。ざらざらとして舌触りが悪かった。黄色みがかった欠片を口に入れると不思議な味がした。濃縮し熟成されたチーズのようなかぐわしい匂いだ。あまり美味しいとも思えないが、信じるものから生まれ出でた結晶だと思うとそれも美味になりうる。
「上手だねフランちゃん。ほらもう少しだよ。全部、食べてね」
「うん……。むっむっ」
 フランはさとるのペニスを丹念に舐めてこそげ落とした。傘の部分から裏筋まで丁寧に丁寧に舌を這わせた。舐めとった固形物は、はそのつど十分に咀嚼しながらトロトロのソースにして嚥下する。
「ん……おいひ……」
 しばし陶酔する。フランは未知の味に舌鼓をうった。
「ふふ。美味しいでしょ? ほらもっと綺麗にして……」
「うん……」
 親猫が毛づくろいするように優しく慈しみをもって愛撫する。はっと気づいた時にはほぼ全部の箇所を掃除していた。綺麗なピンク色が、嬉しそうに呼吸をしているように思えた。
「ありがとう。僕のチンカス美味しかった?」
「チ、チンカスって……」
 さとるの口からそんな下品な言葉が出るとは思わなかったので、フランは少々面食らってしまった。
「チンカスはチンカスだよ。恥垢ってもいうけどなんかね。神様はチンカスと恥垢の間の言葉は作らなかったんだよ。英雄だね」
「な、何が何だかわからないよもう……」
「ふふ。細かいことはいいから僕とチンカスキッスしよ? ちゅっ♪」
「あ、駄目、汚いよ僕のお口……」
「その理屈だと僕のオチンチンも汚いことになっちゃうよ? ほら観念して?」
「あむ、ん……ぁ」
 フランは諦めて口を開けて舌を絡めた。そう言われてれば汚いはずもない。唾液が絡み合い不思議な味のハーモニーが奏でられる。チンカス、不思議。名称はチンカスでもどうしてか崇高な存在のように錯覚する。チンカスチンカス。
「ん……ぷはぁ。ああ美味しかった」
「ふぁ……僕もう……」
「あれもう疲れちゃったの? まだ君のが残ってるよほら」
 そう言うとペニスに巻きついた鞭を引っ張られた。すっかり忘れていたが、今の今までアソコをギンギンにしながら舐めしゃぶっていたのだ。本当に恥ずかしい。
「フランちゃんのもむいてあげるね」
「え……いいよ僕は」
「駄目。お返しだよ」
 ちょっとむくれたような顔も可愛らしい。こんな顔を身近に見れて幸せだと思う。
 さとるは体を丸めてフランの下腹部にもぐりこんだ。目を細めながらオチンチンを凝視される。恥ずかしい。
「あ、んふぅん」
「どうしたの? まだ何もしてないよ?」
「だって……」
 思わず変な声が出てしまった。これから自分の恥ずかしい部分を見られて、さらにチンカスを掃除されてしまうと思うと顔から火が出そうだった。
「一気にしてあげるね」
 さとるの細い髪の毛が揺れる。フランはのど奥まで一気に飲み込まれていた。と同時に包皮をぎゅっと唇に引っ掛けられて荒く皮全体を引きずられている。
「んっ、つぅ、んーっ、んんー!」
 びちびちびちと下品で卑猥な音がし、ペニスにちくちくと痛みが走る。手加減せず一気にむかれてあちこちが燃え上がるようにこそばゆい。
「んっ、ちゅ……んちゅ……」
「あんさとる君もっと優しく……ひいっ」
 そうお願いしようとした途端、先っぽに激痛が走る。歯をたてられたのかどうなのか。ふと下を見ると地獄の悪魔のような上目遣いの容貌が、妖しくも陰惨に垣間見えた。笑いながら嬉しそうに性器をしゃぶる様子に、フランは身震いを隠せなかった。
「んっ……ぷはぁ。フランちゃんったらチンカスいっぱぁい……。最高ぉ……♪ おいひい……んっ」
「あっ、ああ……」
 フランはされるがままになっていた。皮をむかれた痛みもじょじょに和らいでいる。口内たっぷりの唾液が潤滑液となり、狂おしいほどの愛撫で溺れさせようとしてくる。舌が鈴口をつんと叩いたり、傘の裏をねちっこくつつかれたり。頬全体を強烈にすぼめてじゅるじゅると吸われたり。
 さとるの口腔性交の技術はかなり手馴れたものであった。男の感じるツボをおさえた舌技には、甘いため息を漏らさざるを得ない。
「ほら綺麗になったよフランちゃん。見て……」
 見るとすっかり寂しくなった亀頭はすっきりしたピンク色になっていた。純真無垢の初々しい亀頭に感銘を受けて、フランはまじまじと自分の分身を見つめた。
「どう? 僕ってお上手でしょ? もっと気持ちよくしてあげるね」
「んぁ……ふあぁ……」
 むかれた直後のペニスは敏感すぎて快感が何倍にもなる。長い舌をチロチロと絡めれて嗚咽を漏らしてしまう。お尻の穴がぎゅっと引き締まる。ペニス全体が快楽の坩堝で、もうどうしようもないくらいに疼き燃え上がっていた。
「あっ、ああ……ああっ」
 フランは迫りくる欲望の爆発を感じた。脳内を駆け巡る快感物質。純正の副作用のない麻薬に身を任せる。そしてついに爆ぜた。
「ふぁっ、でっ、でるぅ!」
「んむ、んむ、んむぅ~」
 絶頂に達した瞬間もさとるは口を離そうとしなかった。びくびくと震えるペニスに、タコの吸盤のように吸い付き搾精しようとしてくる。
「あっ、あんあんっ……あんっ、あん……ぁ……」
 十数秒に及ぶ長い射精を終える。妖しい上目遣いで常に凝視されていることに今更ながら気づく。
「ぷはぁ……。あーあフランちゃん。せっかくお掃除したのにまた汚しちゃうなんて……。一体どういうつもりなのかな? 僕って君のお便所さんなのかなぁ? ふふっ」
「いや……違うよそんなの」
「あはは嘘だよ。ほらザーメンぐちゅぐちゅおまけにチンカスキッス。混ざりあって美味しいよ? ほらちゅ~う」
「んっ、はぁん。んぅ、んちゅうん。おいしいん、さとる君おいしい……。お掃除させてごめんね」
「そんなことないよ。いいんだよフランちゃん。これで二人で仲良しのチンカス兄弟なんだよ? 愛を語りあった……ね? もっと愛し合おうねフランちゃん……」
「うん……うん……」
 感極まって、フランは嬉し涙を流した。むいてむかれて接吻をして。吸血鬼としての誇りはなく魔性の少年の下僕となり眷属に成り果てた。
 永遠とも思える抱擁と接吻が終わる。やがてさとるはフランを真正面に見据えて口を開いた。
「そうだフランちゃん。今度きみんちに遊びに行っていい?」
「あ……でも」
「いいでしょ。大丈夫、僕に任せておけば万事OKだよ。フランちゃんのお姉さんにも挨拶しないといけないからね」
「うん……」
 胸に楔が打ちつけられたような不安がよぎる。が、滞りなく自然に打ち消した。もうさとる少年には絶対に逆らえなかったから。
 



「ふあ~あ」
 紅魔館ビルの裏口。守衛の男はぼけっとしながら欠伸をかみ殺した。時は既に昼過ぎであり眠くなるにはうってつけの時間であった。
「今日も我が紅魔館は異常なし……。うむ感心感心」
 そんな独り言を言いながら時を過ごす。怪しい人物がいなければ実に楽な仕事だった。
 と、そんな平和を打ち砕くように、空気の読めない侵入者は現れるものである。今まさに小柄な少年が、自分の目の前を通って、ずかずかと当然のように紅魔館に入って行こうとするのだ。男はこれ義務とばかりに少年を呼び止めた。桃色の髪の毛が珍しすぎるほど目立つ細身の少年であった。半ズボンに白いシャツ。見るからに生意気な小僧であったが、その予測を男はすぐに改めることになる。
「なぁに? お兄ちゃん?」
 少年が気づいて振り返る。男は何だか甘えるような黄色い声でお兄ちゃんと呼ばれたので、一瞬躊躇いが生じてしまった。なぜだかわからないが、少年からにじみ出る不思議なオーラに気圧されそうになっていた。
「あ……。ここは駄目だよ。裏口だから。関係者以外は立ち入り禁止。ここに入りたかったら正面からちゃんとアポとってからね」
 そう定型的に説明した。
「えっでもぉ……。僕ここに用があるんだよね……うふっ。ねぇお願いお兄ちゃん……いれてぇ……中に……んっ」
 男はドキリとした。何と少年が腰をくねらせて、甘い声を出しながらウインクまでしてきたからだ。近くで見て、男はやっとこの少年の異常さにきづいた。まず肌の白さが尋常ではなかった。吸血鬼も白いと思ったがこの子はそれ以上だ。驚くべきはその容姿で、女の子とも男の子とも言えない、どちらの天秤にも触れないぎりぎり極限の中性の存在感であったのだ。半ズボンをはいていなければ、間違いなく女の子と決め付けていただろう。
「なっ、何を言っているんだ。ここは子供が来る場所じゃない。早く帰って寝なさい。はぁはぁはぁ」
 男は冷や汗をかいてそれだけ言った。
「ふーん。入れてくれないの? じゃお兄ちゃん? 僕の中に入れてあげたら……考えてくれる? ね?」
 少年が丸い瞳で熱っぽく見つめながら聞いてくる。男はわけがわからなかった。ただただ蠱惑的な少年の魅力に対抗しようと、必死でバリケードを作り上げていた。
「なななにを言っている。早く、早く帰りなさい。お兄さんは忙しいんだ」
「ほらお兄ちゃん……暇なんでしょ? 僕とあそばなぁい? ねぇ? んっ、れえろぉっ♪ ふふ。僕のお口でちゅぽちゅぽしたい? それともぉ……すべすべの太ももとかお尻にお兄ちゃんのアレを擦り付けちゃう? ねぇ……僕はどこだっていいんだよ? ふふ……」
 見知らぬ少年の誘惑攻撃は苛烈さを増していった。女の媚びるような態度がさまになっている。いや女よりも数段手ごわい手管であった。男は奥手な方で免疫がなかったから、余計に少年の魅惑は強烈であった。
「見て……」
 細長い少年の指が、まるでスカートの端をつまむように、半ズボンの裾をつかんだ。軽く持ち上げただけで、少年の白い露出領域が増える。腰をくねっとさせたりそっと胸を寄せるような仕草をしたり。男はそんな少年の痴態に心を奪われていった。
「あはぁん……♪」
「あっ、ああ……」
 男の前にいるのはもはや妖怪であった。この世のものではない存在に恐怖して足がすくむ。だが真に恐ろしいのはその恐怖に魅入られていることだった。
 少年が後ろを向き少し尻を持ち上げるように突き出してくる。尻は丸くて以外なほど大きく安産型だった。肌に密着した薄い布に、下着のラインが透けてみえて、ともすると年頃の少女のような健康的な腎部のそれに錯覚してしまう。少し半ズボンが小さいのか尻肉が微妙にはみ出し、それが原始的な男の欲望を煽る。それでいて足首はぎゅっと細くスタイルもいいのだからたまらない。
「ぁ……ふぅ……ん」
 細い喉からかすかに聞こえてくる甘い官能の振動も、男のリビドーをさらに刺激した。
 どこもかしこも少年は女性的であった。柔らかく丸みを帯びて優しさを感ぜずにはいられない。それでも魂は男に傾いている。その自由さに心をいたく打たれていた。
「お兄ちゃん……僕のこと襲いたいの? ねっ、僕本当に男なんだよ……。ほらここ……」
「うっ」
 そこで男は一瞬我に返った。半ズボンをはいているだけで実は女であるという考え。しかしその邪推は次の瞬間無残に破られた。
 前を見た少年の股間が隆起していた。これは健康的な青年男子なら必ずや起こりうる反応である。少年は確実に勃起していた。妖精とも女神とも言うべき少年が、あろうことか何の恥ずかしげもなく勃起していたのだった。
「どう? 僕ね、お兄ちゃんのこと考えたからこんなに……」
「ううう。やめろ……」
 男は何とかして恐怖をやわらげようと声を振り絞った。
「何を迷っているの? お兄ちゃんも……ガチガチにしてるんでしょ? 僕のお尻みて……ほら」
 少年が再び尻を突き出す。その様子にふらふらと毒気にあてられたように崩れ落ちそうになった。意識を保っても注視するのは少年の淫らな尻であった。ほんの数秒前と違う箇所、透けた下着のラインがずれていた。おそらく内側に。男はそれを想像してしまった。尻肉に食い込む下着の状態を。それだけで男は迸って解脱しそうになっていた。
 目を血走らせて少年の腎部に視線を注ぐ。事実、男は我慢汁でトランクスをだらだらに濡らしていた。いやまずい、やばすぎる。こんな少年に、しかも仕事中に。まずいまずい。あああと少し尻を左右に振られたら自分は。
「くすっ」
 そう思うと、少年が心を読んだかのようにカクカクと腰を振ってきた。弾力のある尻肉がたぷんと揺れるのがわかる。半ズボンがぐいっと食い込み、白い露出で男の視界を覆いつくす。少年は後ろから振り向き男を笑った。嘲笑に満ちたように目が細まっていた。その見下した表情さえも、今の男にとっては快感のスイッチそのものだった。
「ん、くぅう、はぁっ」
 男はどくどくと立ったまま精液を放っていた。触らずにズボンとのこすれと軽い圧迫感で自然に達していた。ズボンに染みを作りながら果てしないほどの徒労感と脱力感に見舞われる。そして加えて少年の尻に幻惑されて絶頂に達したという事実に、なんとも言えない敗北感と背徳感情を覚えながら。
「あ、あああああ。はぁ、はぁぁ……」
「お兄ちゃんったら僕のお尻で抜いちゃったの? 男のお尻で……やらしい」
 少年がくすくすと笑っていた。そしてなおも追い討ちをかけようとしてくる。
「あのね教えてあげる。お兄ちゃんは本当は男が大好きなの……。だって僕のオチンチンがギンギンになってるの見て興奮しちゃったんだからね。嘘じゃないよ本当だよ。ね、本当の美少年ってのは存在するんだよ。それが僕。僕の手にかかったら普通の女の子じゃ気持ちよくなれないの……。ねっ、わかるでしょ? 僕のお尻みて……ムラムラってして本当に入れたいって思ったでしょ? ううん、子供ができちゃうとかは二の次なの。生殖活動よりもずっと素晴らしい性行為。僕で感じて……お兄ちゃんもそれで感じる。それが生きているってことだよね。ほらお兄ちゃん……また僕でヌキヌキしてみる? 今度はぁ……僕の勃起を観察しながらイってみる? 小さいのがぁ……ぐっぐって成長するとこみてね……。ほら男の子で抜いちゃお? 可愛い男の子で……ふふ♪ ほらイッてイッてぇ。オチンチンオチンチン♪ 男の子オチンチンで……そう。二回も男の子で気持ちよくなったらぁ、もう二度と戻れないからね。一生お兄ちゃんは僕のものだよ? 嬉しいでしょ? ずっと僕みたいな美少年でしか気持ちよくなれないの……。ほら……みて……オチンチンかたいよ? びくびく……ギンギンっ♪ しごいて? そうシコシコ~ってね♪ 男の子の勃起オチンチン見て発情欲情してね……。あは、あははは~それ無様に出しちゃえ~あはは!」
 少年の誘導するような淫語に、再び恥部が充血し両手で押さえながらもだえる。数秒後、男は射精しながら気絶していた。前のめりに崩れて顔面を強打する。
「あれっもう終わり? つまんないの。じゃ~見張りさんがいないから僕入っちゃうね。ふふーん」
 意気揚々として、さとるは紅魔館ビルに侵入した。 




「はぁ……」
 十六夜咲夜は空虚なため息をついていた。
「どうして私はあのチャンスを……ああ」
 先日の出来事にどうしても後悔がつのっていた。憧れの王子様、フランドールスカーレットにあれほどまで接近できたというのに。
「死んでもよかったから、押し倒して接吻して涙と鼻水ぐらい吸ってやればよかったわ。できれば弟様の初めても……ああ違うの私そんな女じゃないから。ちゃんと愛し合って結婚して和姦希望の貞操は守るから……。はぁでも背徳的なのも何か感じちゃうかも……。無理やり……この前みたいにチャームされて……あ、あ、あっ。私ったらお仕事中になんてこと……。さーお掃除お掃除!」
 気を取り直して仕事に励む。
 鼻歌を歌いながら窓を拭く。数分ほどした時分であろうか、紅魔館ビルの象徴ともいうべき紅い絨毯を、みしみしと踏みしめる音が聞こえてきた。誰だろう? と思い咲夜はその人物を確認しようと首を伸ばした。
「誰……ふぁっ」
「んっ?」
 咲夜は口の中で絶叫をかみ殺した。なぜなら、究極的に相手が美少年であったから。
「あ、よかったぁ。ねぇお姉さん……僕迷っちゃったぁ……。このビル広いからさぁ……。ねぇ案内してぇ、ねぇん……」
「あっあっあっ」
 とぎまぎして言葉が出てこない。
 小顔で桃色の髪の毛が揺れる童顔の、うっとりするほどの悩ましく涼しげな双眸が笑っていた。肌は粉雪を幾重にもまぶしたかのように白く、壁と絨毯の色と対照的に否が応にも際立っている。ちょっと困ったように小首をかしげる仕草もなんとまぁ堂に入っている。
 この少年は咲夜の感じるツボを大体抑えていた。もう容姿だけで土下座して屈服してしまいそうだった。こんな子におねだりされたらめちゃくちゃに――。
「どうしたの? くすっ」
「あっ、ああ、はぁ! すすいません。案内しますね。どうぞこちらへ」
「ありがとうお姉さん……ちゅっ♪」
「はんっ!」
 咲夜は不意をつかれて頬にキスをされた。麗しき美少年の接吻である。咲夜はほぼ一瞬で恋の虜と成り果てた。
 そして少年は悪びれずに続ける。
「僕の名前は古明地さとる。お姉さんは?」
「わ私は十六夜咲夜でございます。メイドでございます……」
 それを聞くと、さとると名乗った少年は軽く笑って髪をかきあげた。
「ふーん……。都合がいいね。ううん、じゃ行こうか? 僕の大好きな咲夜お姉ちゃん♪」
「あっ……ぁん」
 ぴたっと腕に取り付かれる。柔らかい肉の感触。甘ったるい果物のような匂い。少年のサラサラの髪の毛。白い魅惑のうなじ。そのまま上目遣いで、ああ、胸に、顔を。
「うふふ……」
 妖艶に笑う魔性の少年。咲夜は夢見心地で一歩踏み出した。


「あ~ん僕もう歩けない……」
「ま、まだ全然歩いていませんから。ほら、もうすぐエレベーターがありますから」
 さとるはしきりにぐずっていた。何とか引っ張ろうとするが、腕に両手を絡められているので思うように動けない。冷たい肌の感触がひんやりと気持ちよくて、体温と思考能力をどんどん奪われそうになってしまう。
「もう一歩も歩けない。ね? お姉ちゃん? どこか涼しい部屋でジュース飲ませて……ね?」
「はい。ではそこの休憩室で……」
 咲夜はその提案に異議を唱える理由もなく、ふらふらといわれるがままに従った。
 扉を開けて中にすべりこむ。密室で、今は、美貌の少年と二人っきり。
「それでは今すぐジュースのご用意を、きゃぁっ!」
「あっ、やっぱりお姉ちゃんのおっぱい大きいね。もみもみ~」
「こ、こら。やめて……んぁうん♪」
 突然、はがいじめにされるような格好で胸を揉まれた。さとるの柔らかい手が、なだらかなふくらみを悠然ともみしだく。
 咲夜は振り払うこともできずに、淫らなあえぎ声をあげた。
「んっ、本当に……やめ。お姉さん怒るわよ……んっ、んんっ!」
「ふふ。怒ってもいいよ? できることならね。ほら……お姉ちゃんのおっぱいいい形だね? 僕の手にぎゅって収まるお手ごろ感覚……。僕こういうおっぱいだーいすき!」
「はぅん、そんな……やめな……さい」
 本心では胸のことを褒められて浮き足立っていた。これほどの美少年にならこれぐらいのこと何でもない。いや、もっとあんなことやこんなこともして欲しかった。しかし今は仕事中であった。咲夜の中で天使と悪魔が激しい葛藤を繰り広げていた。
「やめて? どうしてぇ? だってぇ……お姉さんの方から誘ってきたんでしょ? 腰を振って歩いて……お尻をんーって突き出してね。純朴な少年の心を惑わしちゃって……いけないんだぁ咲夜お姉ちゃん♪」
「な、何を言って……きゃっ。やめなさいこらっ!」
 次の瞬間、メイド服のスカートがふわりと捲り上げられていた。黒の花刺繍のレースの下着があらわになる。直そうとしても体が動かない。胸をがっしりとつかまれて力が入らなかった。耳元ではさとるの美声で脳内が常に混乱状態にある。
「あーっほらぁ。こんな淫靡でやらしい下着つけちゃって……。ねっ、やっぱりいつもエッチなことばっかり考えているんでしょ? どうやって僕みたいな可愛い少年を……色仕掛けして誘惑しちゃおうとかね。そうなんでしょ? んっほらほらぁ……」
「んっ、ああん……」
 さとるの言葉責めに脳がとろけそうになる。尻を丸出しにして、羞恥を煽られながら痴女であるかのように刷り込まれてしまう。下着がじっとりと濡れるのがわかる。少年の責めに感じて、愛液が太ももを伝わって流れ落ちる。
「感じているの……お姉ちゃん? 本当に淫乱なんだね。……んっ、ああん♪ お姉ちゃん……。お姉ちゃんがあんまりエッチな格好するから……僕のオチンチンがこんなに……ふふっ」
「あっ、んんっ」
 若々しい棒状の猛りを咲夜は背後に感じ取った。尻肉にぐいとめり込むほど剛直を押し付けられる。
「ほら。お姉ちゃんのせいだよ? ぜーんぶお姉ちゃんのせい。ビッチ咲夜ちゃんのぉ……スケベなお尻で僕……んっ♪」
 両手で征服されるようにぎゅっと肉をつかまれる。下着も痛いほど食い込み、もはや淫蕩な桃を淫らに見せるだけの一枚布に成り果てていた。
「あ~ん僕咲夜ちゃんのお尻で出ちゃう♪ いやらしい咲夜ちゃんのお尻で……ああん♪」
「あん、やぁん、んぅん♪」
 下着と谷間の間にペニスが差し込まれる。咲夜もそれを感じ取り、少年の猛りを享受しようとして獣のように腰を振った。ねちゃねちゃという卑猥な音が室内に満たされる。美麗の少年とメイドの淫らな性行為。誰にも邪魔されない空間で悦楽は深まっていく。
「ほらもっと腰振って……ああんあん♪」
「は、はい! メス豚咲夜の下品な尻で射精してくださいませ……。咲夜は美少年様の下僕でございますっ! はぁ~ん♪」
 すっかり思考を操られた咲夜が自ら堕ちる。舌を出して笑いながらさとるのために奉仕しようとする。直後、自分の愛液ではない粘っこい別の液体の放出を感じる。おびただしいほどの量を尻全体にまんべんなく。咲夜は安堵してぐったりと倒れこんだ。
「あ、はぁ……はぁ……」
「ああん♪ とってもよかったよ咲夜ちゃん」
 その言葉に幸福感を感じて身を打ちひしがれる。さとるはペニスを筆のように使い、出したばっかりの精液を塗りたくってくる。
「あふ。ああさとる様……もっと……」
「もっと? ふふん、咲夜ちゃってばとんだメス猫だね。でも……ふふっ♪」
「はぁ……はぁ……」
 頭がぼーっとしてしまう。自分が誰だかわからなくなる。嫣然と微笑む少年と空間を共有している。正気に戻ることなんてできない。もっとこの少年のつくる世界に浸っていたい。このままこのまま。


「フランちゃん! 外にいるんでしょ? 僕わかっているんだからね!」
 突然さとるが扉の外に向かって大声を放った。
 フランちゃん。フランドール坊ちゃま。つまり弟様。まさか――。
「……」
 ガチャリと音をたてて、無言で入ってきたのはやはりフランであった。少々顔をあからめて、もじもじとして太ももをすり合わせている。
「もーフランちゃんたら。お迎えにきてって言ってたじゃん。おかげで僕面倒だったんだからね。まぁでもいいや。偶然この咲夜ちゃんに出会ったんだからね」
 そう言って笑うさとる。咲夜はびくびくとして頭を下に向けた。この状況をどう説明すればわからなかった。今の会話を聞いて見れば弟様の友人であるらしい。いやしかし、こんな場所で性行為を。いや元はといえば少年の方から誘ってきて。ああ頭が混乱するわけがわからない。
「あ、あの……。弟様。これには深いわけが……」
 まだ無言であった。これはあれであろう。先日のことと合わせてレッドカード。解雇ではない。おそらくは凄惨極まりない死の予感。
「ふふっ。ほらフランちゃん? 咲夜ちゃんが怖がっているよ? 駄目じゃない部下にそんな態度じゃ。何かしてもらいたかったら……ねっ」
「ん……うん」
 さとるが歩みより声をかけた。白い肌が二人。それにしても、この二人の関係はどんな間柄なのだろうかと咲夜は思った。さとる、さとる。そういえば苗字は何と言っただろうか? よく思い出せない。
「咲夜ちゃんはおしおきしてもらいたいんだってさ。だから……」
「うんさとる君」
「あ、あの……」
 自分を無視したかのように話が進められる。いつもはもっと元気のいいはずなのに、今は牙を抜かれたかのように意気消沈している。そのことに咲夜は不気味さを感ぜずにはいられなかった。
「はいおしおき開始! 僕はお口ね。ほら咲夜ちゃん舐めて」
「あむ……」
 何かを考える余裕もなく口に突っ込まれる。美少年の愛すべきぺニス。全身全霊を持って奉仕しなければならない。
「おしおきだよ咲夜」
「ふぁ、ふぁい……」
 頬張りながら言う。無機質な声が怖かった。
「んーいい子だね。ねー今はオチンチンが二つだけど……。ねぇ咲夜ちゃん? オチンチンハーレムってわかる? 咲夜ちゃんみたいなエッチな子を美少年のオチンチンで取り囲んで輪姦しちゃうんだよ。ねぇ素敵でしょ? いつかそこに連れていってあげるね」
「んっ、むぐ……あむ」
 口内を犯されながら耳を傾ける。オチンチンハーレム。何ていい響きなのだろう。美少年に囲まれて……そんな……ああ。
 咲夜の夢想は広がった。虫も殺せないような可愛らしい少年達が、突如として変貌してその正体を現して、何も知らない自分を弄んで蹂躙する様子を想像してしまった。
 次々と押し付けられる幼い皮かむりの未熟なペニス達。両手と口とオマンコとお尻を使ってもまだ足りない。頑張って射精させても少年の数は多すぎる。淫蕩な表情や肉体を使った奉仕も少年達の性欲を理不尽に煽るだけで……。その内少年達が私のお尻にしか興味なくなって……。二つの穴だけじゃ足りないから上下左右を縦横無尽に埋められて……はぁぁ。どんどん行為が暴力的になってきて……壊れるぐらい……んっ。全身を真っ白に塗装されながら終わることなくペニスを受け入れて……。ああオチンチン、オチンチンハーレムってなんて素敵なのかしら……。オチンチン、100本200本ふぁあ。
「あっ。咲夜ちゃんが完全に出来上がっちゃったよ。ほらフランちゃんもお尻にぎゅってしてあげなよ。咲夜ちゃんはそれが好きなんだってさ」
「うんわかった」
 フランはただそれに従った。咲夜の腎部にずっしりと温かみのある重みを押し付ける。
「あ、ああ……弟様。嬉しい」
「もっと腰ふってあげて。大好きなんでしょ? フランちゃんのこと。許すよ。ふふっ」
「は、はいありがとうございます本当に……」
 咲夜は涙を浮かべた。そして腰を後ろに突き出して、フランの幼いペニスを尻肉に溺れさせようと尽力する。
「あ、うん。咲夜。それいい」
「ああ。嬉しゅうございます弟様。あ、はぁん♪」
 淫らに濡れた尻の谷間に細い棒がこすれる。快楽をむさぼる獣達は燃え上がる愛をわかちあう。
「あれっ。二人とも仲いいじゃん。僕なんだか妬いちゃうなぁ。ん~あっいいこと思いついた。ふふ、君達はそこでちょっと熱々で頑張っていてね。じゃ、僕また来るからね」
 さとるはそう言って部屋を飛び出した。




 レミリア自室でうんうんと唸っていた。どうにもこうにもプロジェクトがうまくいかないのである。あちらがたてばこちらがたたぬ。先代から莫大な財産を受け継いだはずであるのに、どうしてこうなってしまうのかわからない。日に日に増していく負債の山に頭をごんごん壁に打ちつけながら悩むのであった。
「気分代えに紅茶でも飲もうかしら? 誰か、誰かいないの?」
 レミリア近くに誰かいないか呼んでみた。
「はーい呼びましたか?」
 反射するように声があがる。しかし見慣れない人物、しかも年端のいかない少年であった。
「誰よあなた。ここに勝手に入ったら駄目よ。早く出て行って! 私の気がかわらないうちに」
 いらいらしていたので、そう言って追い払おうと思った。だが少年はくすりと笑い、おどけながら口を開いた。
「僕は君の救世主なんだよ? 邪険にしていいのかな? ね? 困っているんでしょ?」
「何を馬鹿なこと。あなたなんて知らないわ」
「そう言わずに。ね、こっちに来てよ。いいもの見せてあげる」
 少年はそのまま手招きをしてきた。一体どんな意図があるのか見当がつかない。それにこんな身も知らぬ少年がこのビルに侵入できるわけがないのだ。
「ほらこっちこっち」
 訝しげに思いながらも、なぜか抵抗できずにレミリアは少年の後を追った。


「ほらここだよ」
 少年はとある部屋の扉を指さした。
「ここがどうしたのよ?」
「うふん。あのねレミリアさん。失礼なようだけど、部下をうまく使うってのは大事なことだよね。こんなに大きな企業ならなおさらだよね。ふふ。ねぇ開けてみて。きっと楽しいからさ……」
 にやりと生意気に笑う少年に吐き気がした。何を馬鹿なと思い扉に手をかける。
「な……」
 そこで見たもの。予想だにできなかった。
「あっ、はぁん、はぁん♪ 弟様……咲夜のオマンコいいですか? はぁん童貞オチンチン最高でございます。咲夜も弟様のために純潔を守っていましたからぁ……はぁあ~ん♪ もっともっと突きあげてくださいませ。あんあんあん♪」
「んっ、あ、あ。咲夜ぁ。咲夜の中ぐちゅぐちゅしてていいん♪ ごめんね咲夜。僕ちょっと不器用だから……ああ。僕咲夜にひどいことしちゃった許して咲夜。あんあん」
 部下である十六夜咲夜が、何と弟のフランドールを騎上位で犯していたのである。しかも二人とも我を忘れて気持ちよさそうに腰を振っているではないか。
「フ、フラン。咲夜は一体……」
 そんな驚愕をしているレミリアに、少年がそっと近寄り耳元でささやいた。
「あは。何をぼけっとしてるの? これが現実だよ? レミリアさんは周りのことなんてなーんにも考えちゃいないんだ。だからすぐに足元をすくわれちゃう……こんな風にね。あはは!」
「くっ。離れなさいよっ!」
 腕を振り上げる。が、少年は予知していたかように身を翻した。
「ねぇ僕知っているよ。紅魔館の経営状態は最悪な状況。だから、僕が買い取ってあげる。歴史ある紅魔館は地霊殿カンパニーの傘下になる。うふふふふ。あー心配しないで、フランちゃんは僕の仲のいい恋人でぇ、君はお二号さんでもなっちゃえばいいよ。ひひ、ひひひひひ♪ ああ、楽しいなうふふふっ♪」
「は、は、はぁ」
 レミリアは耳元で悪魔の怨嗟を聞いた。意識がぐらつくような、鈍重な錨を脳天に打ち下ろされたような気がした。できることならば、このまま意識を混濁させてしまった方がよかった。
「あーん弟様……出てるぅ♪ すごいすごい……」
「咲夜。好きだよ。あーんっ♪」
 少年の笑い声と、性の歓喜が混ざり合う。レミリアはこれが現実とは依然として信じられなかった。何かの間違いで、夢か幻で。
 しかし現実は非常であった。紅魔館は名を変えて古明地さとるの統治する所と成り代わった。地霊殿グループの盛栄は現在実に飛ぶ鳥落とす勢いである。


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