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小箱の小話
東方二次小説が多目。 エログロ、ホラーミステリ洗脳色仕掛け等。
幽々子緊縛
 西行寺幽々子は紅魔館の大広間の柱に厳重に縛り付けられていた。
 それもレミリアお嬢様501歳おめでとう誕生パーティの最中である。
 何故こうなってしまったのか? それを説明するには複雑な事情を説明しなければならない。




 




「妖夢~~。早くおかわり持ってきて~」
「は、はい幽々子様。今しばらくお待ちください」

 西行寺幽々子は類まれなる大食漢である。それと同時に大変な美食家でもあった。四六時中食べものの事を考えていた。あれがおいしい、これがおいしいと聞けばすぐに取り寄せた。まず七時に早めの朝食をとる。そして九時に軽食、十一時にまた軽食、十二時に昼食、ゆっくりシエスタして、三時におやつ、五時におやつ、白玉楼の周りを散歩した後夕食。九時にはお菓子をつまみその後寝るまでに腹が減れば
夜食をいただくという生活であった。
 回数が多いだけならまだいいのだが一度に食べる量が幽々子はケタが違った。朝昼夜には必ず三合はご飯を食べるのが日課となっていた。しかしこれはあくまでも最低基準である。ごはんですよ、のり玉ふりかけ、昨日のカレーの残り、ご飯がすすむおかずがあれば五合で六合でも軽く平らげた。最低一日に五回ある軽食も並大抵な量ではなかった。饅頭、ケーキ、せんべい、クッキー、チョコレート甘いものはいくらでも食べられた。
 多大なる飽食のわりには、不思議な事に排泄物は一切なかった。食べ物は消化はするが排泄は全くない、質量保存の法則を完璧に無視しているのである。まさか口に入れた物を100%有効利用できるぐらい幽霊とは完璧な永久機関なのであろうか? 西行寺幽々子の胃でどんな化学変化が起きているかは幻想郷七不思議の一つとなっている。



 妖夢はほとほと困り果てていた。
 白玉楼の財政も逼迫していて限界だった。しかも幽々子の食欲は日に日に増大している。幽々子は食料が無くなれば、どんな小さな虫や木の芽でもかきわけて食べ物を求める。つまり幽々子に食料を提供しなければ幻想郷は大規模な飢餓に陥ってしまうのである。
 このままではどうしようもなかった。
 早急に手を打たなければならない。
 妖夢はわらにもすがる思いで八雲紫に知恵を仰いだ。




 幻想郷のとある場所の和室。妖夢は幻想郷の賢者と正座をして向かい合う。
「餓鬼病ねそれは」
 八雲紫が聞きなれない言葉を言った。
「はぁ? 餓鬼病とはなんでしょうか?」
 妖夢が聞き返す。
「正確には尋常性餓鬼症候群ね。千~四千歳の幽霊に多く発症するわ。感染手段はウィルスによるものが一般的。ほおっておくと夜な夜な食料を求めて地上を跋扈し、末期には発狂して目に見える物は全て食べようとするわね。幽々子クラスになれば幻想郷自体を飲み込みかねない。妖夢、これは幻想郷の危機よ、でも大丈夫この症例は見たことがあるのよ。ええ、全て私に任せておきなさい」
 紫は余裕の表情で扇子で風を送りながら言った。










「えーゴホンゴホン、本日は私の主人、レミリア・スカーレット様のご誕生日にお集まりいただき、まことにありがとうございます。えー私とレミリア様が出会ったのは、あの春麗らかな日差しが差し込む昼下がり……」






「これは一体どういうことなのかしら?妖夢。今日はご馳走にありつけるとパーティに来たのだけれど……」
 柱に亡霊捕縛用のお札で作られた縄でくくりつけられた状態のまま、幽々子は言った。
「申し訳ありません幽々子様。しかしこれは幽々子様のためを思いやってしている事なのです。幽々子様は今、重大な病に侵されています。それを治療するためにこのような処置をとらせていただいております。どうかご容赦くださいますようお願いします」
 妖夢が説明口調で幽々子に答える。
「いやねぇ私は幽霊なのよ。病気になんてかかるわけないじゃない。全くもうこんな馬鹿げた茶番を考えたのは誰かしら? 私にはもうわかってるのよ。紫? そこにいるんでしょう? 早く出てきなさいな」
 そう言うと何もない空間からくぱぁと八雲紫が突如姿を現した。
「あら幽々子ご機嫌いかがかしら? その姿は何? 面白い趣向ね、緊縛プレイでもするつもりなのかしら?」
「紫、これはあなたの差し金なんでしょう? ああ早くこれはずしてお願いよ。みんなおいしそうに食べてるわ。もう限界よ、紫、いくら友人同士でもこれ早くはずさないと私怒るわよ。末代まで呪って呪い尽くしてやるんだから」
 幽々子が恨めしそうな顔で言った。
「私は友人としてあなたの身を大事に考えてこうしているのよ。感謝はされど、責められる筋合いはないわねぇ。いいから今日は一日そこで頭冷やしているといいわ」
 そう言って紫はどこかへと消え去ってしまった。



「妖夢~これはずして~何だか息苦しいわ~」
「そうもいきません幽々子様。これは霊夢さんと河城にとりさんが共同で作ってくれたものなのです。我慢が大事ですよ。我慢が。白玉楼の主人として恥ずかしくないような態度をとってください。そうでないとみなさんに笑われてしまいますよ」
「そんな事いっても周りにおいしいものばかりで我慢しろって方が無理だわ……」
 そう言った途端幽々子のお腹からグーギュルルと腹の虫が鳴く音がした。
「ほらこんなに虫が鳴いて……い、痛い、痛いわ、とてつもなく痛いわ!! 縄がきつく食い込んで……ああ!」
「言い忘れてましたが、この装置は幽々子様のお腹の虫がなった時、口から涎をたらした時に反応して、食い込んで霊力を流します。どうか痛い思いをしたくなければ食に対する煩悩を捨て去ってくださるようにお願いいたします」
「しくしく……しかたないわねぇ。いいわよ、パーティが終わったらヤケ食いしてやるんだから……しくしく」
 




 レミリアの従者、十六夜咲夜が司会と演説を雄弁にこなしている。紅魔館大広間の中はがやがやと喧騒に包まれていた。
 このパーティーは立食式のバイキング形式である。よって出席者はおのおのが好きな食べ物を手に取り、気の合う仲間達と楽しく会話しながら料理を楽しんでいた。ただし西行寺幽々子を除いては。



 幽々子は必死で食べ物の誘惑から逃れようとしていた。腹に力を入れ虫が鳴かないように気合をいれ、視覚で惑わされないように目をつぶった。涎もたらさないようにぐびぐびとあふれる生つばを次から次へと飲み込んでいた。しかし漂ってくる匂いだけはどうにもならなかった。カチャカチャとナイフやフォークと食器がこすれる音に混じって、かぐわしいおいしそうな食べ物の香りが飛んでくると、たちまち
口が半開きになり口の端から溜まった涎がポタリポタリと落ちてしまいそうになるのだった。
 
  幽々子は数十分必死で耐えていたもののついに我慢しきれず涎をたらしてしまった。
「キャーーー!! 縄が、縄が、縄が痛いわ妖夢、助けてよぉ……」
「いけません幽々子様、まだパーティは始まったばかりですよ」
「そんな事言っても……ゴクリ……このままでは私頭がおかしくなって成仏してしまうわ……」
「はいはい、冗談は口だけにしておいてください」

 幽々子は妖夢が紫にかどわかされてしまったと思った。そうでなければあのいつも優しい妖夢がこんな仕打ちをするはずはない。痛みに耐えながら心の中で着々と紫に対する復讐を考えているのであった。






 チルノは大妖精と一緒にパーティに出席し、ソフトクリームを舐めながら歩いていた。
「お! 大ちゃん見てみて。あれ白玉亡霊じゃない? なんで柱にくくりつけられてるのかな?」
「チ、チルノちゃんあんまり近づかない方が……ほ、ほらすごい怖い目で見られてるよ」
 チルノは大妖精の制止も聞かずに、にスタスタとソフトクリームを舌先でいじりながら近づいた。
「おー白玉の。何で柱と抱き合ってるんだ? 宿題でも忘れたのか?」
 チルノは不思議そうな顔で聞いた。
「チルノさん今晩は。幽々子様は今は自己を見つめ直しているのです。今日はこの場を借りて厳しい試練を自分に課して乗り越えようとしているわけです。どうかご容赦ください」
 妖夢が厳粛な雰囲気で答えた。
「ふーん……よくわからんが……こいつ目がヤバいぞ。普通の人間の目じゃない、ああ亡霊か」
「ソフトクリーム……甘くておいしいソフトクリーム……甘くておいしい……ブツブツ……グビリ」
 幽々子は目を血走らせながらチルノの舌先で溶けるソフトクリームを凝視していた。
「んん?何だ? もしかしてこれ欲しいのか? ん? なんか言え。言わなきゃわからんぞ」
「チ、チルノちゃんもう行こうよ。なんか怖いし……ほら早く早くっ」
 大妖精が腕を引っ張っていこうとするがチルノは続けて話かけた。
「ほ~~れほれこれが欲しいのか? ほ~れほれ。ペロペロペロ……あぁおいしいなぁ」
「チルノさん駄目です。みだりに刺激する事は逆効果になりますので……どうか……」
 妖夢がチルノの行為を止めようとするが、チルノは中々やめようとはしない。
 二人が揉み合っている内に幽々子の理性は限界点を突破してしまった。
「……もう我慢できないわぁ……こんなの無理……あぁぁぁああ~~~~ん。食べたい食べたい食べたい舐めたい舐めたい舐めしゃぶりたぁい~~~!!」
 そう叫んだかと思うと幽々子の首がろくろ首のようにぐいーんと伸び、チルノの持っていたソフトクリームを捕獲しようと試みたが、口から溢れ出る涎を察知した緊縛装置からの霊力攻撃により、幽々子の伸びた首はぐったりと床を舐めた。
 チルノと大妖精はびっくりしてどこかへと消えてしまった。
「ううう~~~悔しい、悔しいわぁ……恨めしい、裏飯屋、いえうらめしいぃ。うぅ……苦しい痛い……ぐぼっ……」
「ゆっ、幽々子様そこまでして……。でも私は幽々子の事を思って情けはかけたりはしません。私、魂魄妖夢は心を鬼して使命を全うしたいと思います! それにしても困りましたね。いくら幽々子様が霊体とはいえなりふり構わず首を伸ばすとは……。霊夢さんとにとりさんにちょっと聞いてきましょう」









「ええーそれでは次に移りたいと思います。新郎新婦……じゃなかったわ。偉大なるレミリアお嬢様と華麗なる瀟洒なメイド十六夜咲夜による、ケーキ入刀の式になります。さぁ……お嬢様……あら? どこですか? お嬢様? おじょうさまぁ……おじょうさまぁぁぁぁぁ~~~咲夜はいつでもお嬢様をお慕いしております。隠れてないで早く出てきてくださいよぉ~~」







 妖夢は幽々子がぐったりしてる間にパーティ参加者の中から霊夢とにとりを呼んできた。
「頭もこれで固定して……と。よし完成だ」
 幽々子の頭の位置を調整しながら河童の技師、河城にとりが言った。
「やれやれこの白玉楼のお嬢様もとんだやっかいものね。この装置に充電しておいた霊力がもう半分ないわ。補充はしておいたから当分はもつはずよ。そうそう、紫にも声をかけておいたからその内来るはずよ。全く自分の友人なら最後まで面倒みなさいよね」
 呆れ顔で霊夢が言った。
「すいません、霊夢さんにとりさん。助かりました」
「いやいいのよ妖夢。幻想郷のためなら力は出し惜しみしないわ」
「じゃ何かあったら呼んでおくれよ」
 二人は手を振りながら去った。
 妖夢はほっとした。これで幽々子様は醜態を晒さずにすむだろう。





 頭まで固定されて幽々子は困り果てていた。先ほどからまともに体も動かせずに何も食べさせてもらえずに精神の限界はとうに過ぎていた。幽々子は思った。ああこれで私はこのまま一生を終えるのね。なんてつまらない人生だったわ、こんなことなら昨日腹がちぎれるくらいご飯を食べておけばよかったわと。今までの食事が走馬灯のように幽々子の頭の中に浮かび上がると、たまらず腹が鳴り、涎をたらした。
「あああああーー!! 痛い痛い痛いーーーー! ちょっと気を抜くとまたこれだわ……。……絶対に許さないわ……紫も妖夢も……ううぅ……しくしく……なんて私はかわいそうな女なのかしら。信じていた友に裏切られ、有能な従者にも裏切られ、もうこのまま消えてなくなりたいわ……」



「幽々子様、パーティはもうすぐ終わりますからね。後少し頑張ってください」
 幽々子がせつない感傷にひたっていると妖夢が元気づけるように言った。
「そう、終わるのね……私の短い命ようだわ……。ああ一度いいからあの桜が満開になるのが見たかったわぁ」
「幽々子様お気を確かにしてください。終わるのはパーティですよ、パーティ」
「パーティ? パーティってどんな食べ物だったかしら? 思い出せないわ……」
 妖夢は幽々子が変な事をつぶやくようになってきたので多少不安になってしまった。しかし幻想郷の賢者である八雲紫が提案した事であるので、絶対に間違いはないと信じていたのである。 


 チルノが騒ぎを起こしてからというもの、幽々子に面白がって近づくものはいなかった。それもそのはずで生き物を死に誘う能力を持つ亡霊が、うつろな目をしてぶつぶつつぶやきながら、もの欲しそうな目で見つめてくるのだ。関わりあいにならない方がいいと考えるのは当然である。もしこの先この貪欲な亡霊に近づく者があったなら、それは絶対的強者か恐怖を知らぬ者であろう。








「ひっく、ひっく……お、お嬢様はどうして私の愛に気づいてくれないんでしょうか……。こんなにも積極的にアピールしているのに……。ああそうか私は人間、お嬢様は吸血鬼。二人は相成れなく、結ばれることの無い断の愛……。そうなのですね……おお神は無慈悲な事をしなさる。しかしこの十六夜咲夜はあきらめません。二人の恋路にどんな障害があろうとも――」









 古明地こいしは紅魔館のパーティに招待状で呼ばれて、姉のさとりとペットのお燐の三人で来ていた。こいしの行動は無意識によるものである。だから悪意という悪意も存在する余地を残さず行動を起こしてしまうのである。今回はその無邪気な思慮が多大なる悲劇を引き起こしてしまう事となる。


 こいしは無意識に料理の皿からソーセージをフォークで突き刺して自分の皿に盛った。全くの無意識による行動なので特に意図は無かった。こいしの好みの食物である肉を練り上げて調理した、ソーセージをこいしが選んだのもごく自然な事である。
 満足いくまで皿にソーセージを取ったこいしはトコトコとパーティ会場である大広間を移動した。音もなく誰にも気づかれる事もなく。


「あ~~んもぐもぐ……」 
 ちゅぶちゅぷと少し下品な音をたてながらゆっくりとソーセージを噛み砕く。
 可愛らしい小さな唇に油が滴り、ペロっと舌で口の端を舐める。
 柔らかい腸詰肉が少女の口の中で唾液と混ざり合い細い喉がビクンビクンと蠢動し、飲み下していく。
 それは無意識であっても淫靡で扇情的であった。

 こいしはもう一つソーセージを突き刺し口に運ぶ。
 今度一気に噛んだりしなかった。
 薄めの唇で肉を挟みこみ、ぷるぷると震える感触を楽しんだ。
 優しく愛撫するようにたっぷり焦らした後、唾液と油がほどよく交じり合ったソーセージを一気に噛み砕いた。
 
 こいしは色々な食べ方を試した。
 一度に十本も口に入りきらないぐらいに入れてモグモグしてみたりした。
 こいしは無意識に食べていた。
 そうあるがままの無意識だったのである。



 誰も気づいていないこいしのこの行為を幽々子だけは気づいていた。幽々子の食に対する思いが感覚を鋭敏にし、無意識の壁を打ち破った。結果こいしの神聖な行為を目の当たりにして、口から涎がもう飲み込め無いほど溢れ出したのである。

「あぶぶぶ、おぉおおがあああ……おっぉおおおぼぼぼぼ」
「ゆっ、幽々子様どうしたんですか?」
 こいしが見えない妖夢にとっては、幽々子が何故苦しんでいるかわからなかった。
 窒息しそうなほどの涎と縄から流れる霊力によって、幽々子の霊体に何かが起こり始めていた。




 古明地さとりは妹のこいしを探していた。姉妹的な感覚で大体の位置はわかるのだが、こいしの無意識行動による粗相が起きては困るからだ。
 しばらく歩いてさとりはこいしを見つけて声をかけた。
「もうこいしったら行儀が悪いわねぇ。そんなにもの詰め込んでくちゃくちゃさせながら食べて……」
 さとりはこいしに説教しようとして恐ろしい他人の心を読んだ。
 その原因はこいしにあった。
 もう限界が迫っていた。
「こいしっ!! 早く食べるのやめなさい! いやそれじゃ遅いわ早く遠くへ……」


 さとりが異変にいち早く気づいたはずだが全ては遅かった。






 幽々子は涎の海に溺れていた。そして幽霊になって初めて吐きたいと思った。排泄を一切しない幽霊にとって嘔吐とはいかなるものであろうか? そもそも消化器官が存在しないのだから、食べ物は一体どこにいくのであろうか? 消化と排泄は同一原理の元にある。幽霊にとってもそれは当てはまるはず。
 つまり幽々子は食べ物を消化したわけではない。食べ物を微少の量子レベルまで圧縮し、分解することなく霊体に溜めこんでいるのである。しかし各霊体に溜め込める量には限界がある。
 人間ならば胃の満腹感が脳に伝わり、これ以上の食事を抑制するシステムが備わっているが幽霊にはそれがない。食べたいという気持ちのままに食べ続ければいつか終わりが来るのは自明の理だった。



「幽々子様っ! しっかりしてください! 今紫様を呼んできますから……」
「お、お、お、ぉぉぉ……あああーーーー!」
 幽々子がおたけびを上げたと思うと大きく開いた口から大量の吐瀉物が流れ出た。それは生易しいものではなかった。まるで洪水のようにあっという間に大広間をゲロ浸しにし、阿鼻叫喚の声が聞こえる大惨事となった。

「誰か助けてーお、おぼれちゃぐふぅ……」
「あたいがさいきょうのゲロと戦うわ。みんなよく目に焼き付けておいてね!」
「そーなのか??」

 ゲロのほとんどの成分はご飯だった。何百年の時の間に溜め込んだであろう白米が溶けたぬるぬるしたゲロ水が紅魔館を破壊しつくした。紅魔館で許容しきれないゲロは湖へ流れ込み、綺麗な澄んだ湖が辺り一面ご飯でみっちり埋まってしまったのである。
 幸い霊夢らが避難経路を確保し、先導したため死人が出る事はなかった。
 人々はこれをご飯異変と後に名づけた。





「ふぁ~~あ。……ああ私寝ちゃったのか。そういえば幽々子はどうなったのかしら? そろそろ行かなくちゃ。あら紅魔館から白いものが湖に流れて行くわね。何かしら、まさか、まさかね……」






 破壊された紅魔館は八雲紫のへそくりにより再建された。湖を埋めたご飯の山も紫がスキマでなんとかして処理した。
 幻想郷は危機から救われたのである。








 紅魔館でゲロを吐き終わってから幽々子ばったりと倒れて一週間ほど目を覚まさなかった。
 再び目覚めた時幽々子は別人のようになっていた。あれほど飽食の限りをつくしていた食事も一日にご飯一膳だけをとり、綺麗な水を数回飲むだけという質素な生活になった。


 妖夢はおいしそうにゆっくりご飯を食べる幽々子を不思議そうな目で見ていた。
「幽々子様? 本当にそれで満足なのですか? あまり無理をされても……」
「ふふ大丈夫よ妖夢。私はわかったの。食事を楽しむために一番大事な事。それはね、茶碗一杯のご飯と……大好きな人と一緒に食事する事よ」
 幽々子は晴れ晴れとした顔つきで言った。
「えっえっ? どういうことですか……? 私にはよく……」
「もう妖夢ったら……鈍感なんだから……チュッ♪」
「えっ? えっ? ええ?? おっお水持ってきますねっ」
 頬に接吻されただけで真っ赤になる妖夢を見て、幽々子はくすくすといつまでも笑っていた。






 白玉楼は今日も平和である。
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