
~さとる君編~
部屋の中は無駄な家具は無く閑散としている。秘密の地下の一室のベッドで古明地さとるはううんと背伸びをした。
現代の地上は大騒ぎになっていた。近年の各方面への台頭が目覚しい、地霊殿カンパニーを統べる古明地一族の御曹司、古明地さとるが誘拐されたというのだ。この事態に父親の古明地聡は驚きと悲しみを隠せなかった。
夜半を過ぎた頃犯人グループからの電話が入り、大金の要求を突きつけたのだ。警察の方針としては、交渉の電話を長引かせて逆探知で居場所を突きとめる方法に決まった。度重なる電話、しだいに犯人の態度は威圧感を増していく。古明地一族の全責任を受け持つ重圧は計り知れない。聡は早く息子を助けなければと、法外な犯人の要求のために心をすり減らしていた。
見るからに屈強な男がさとるが拘束されている部屋へと入る。さとるを誘拐したのは五人グループ。彼らの目的は支配者階級への反発と憎悪、そしてやんごとなき理由であぶくのように増えた借金の返済など、各々の目的を共にした男五人だった。
彼らにとってはこの行動は正義ある行為、いわば聖戦だ。ほとんど日の当たらない社会を生きてきた彼らにとっての、いわば勇気ある抵抗である。失敗は絶対に許されない。
さとるは部屋の隅にあるベッドの上で寝転がり、少年漫画雑誌をつまらなそうに見ている。
「あ、お兄さんに交代? よかったぁみんな怖い人ばっかりでさぁ」
男はニコニコと笑う少年を一目見て、ゆっくりと椅子に座った。男はこのさとる少年の落ち着きように驚いていた。自分が誘拐されたことぐらい直ぐにわかるであろう。このままちょっとした事のもつれで縊り殺されてしまうかもしれないのに。男はこの涼しげな美貌の少年の容姿に目を留めた。
肩までかかるややくせっ毛の髪。整った目鼻立ちにきりりと引き締まった口元に、少しはにかめば白い歯が整然と並ぶ上品な笑顔。半袖と半ズボンという子供っぽい服装だが、生地も細かい刺繍も尋常ではないレベルで、少年の体に合わせて計算され裁断された、豪華な技術の集大成に間違い無かった。
野蛮な力仕事など一度もしたことが無いであろう細く白い腕、染み一つ無い妖精かと思えるような足。明らかに一般人とは別次元に位置する者のオーラが、体全体から発せられていた。
男はさとるを初めて見た時、男の子か女の子か区別がつかなかった。もしスカートをはいていれば女の子と見間違う自信がある。漂白されたのかのような真っ白な肌、そしてさとるには妙な色気が漂っていた。
「ねーねー、お兄さぁん。ボクいつまでこうしていればいいの? 知ってるよ、これって誘拐なんでしょ? あのね、ボクのパパはね、とっても臆病なんだよ。偉そうにしててもね、内心はびくびく。あれなんて言うのかなぁ? 虚栄心の塊ってやつとか? だから直ぐに身代金用意しちゃうと思うよ」
さとるは退屈をしていたのか男にしきりに話しかける。さとるにはよくわかる癖があった。他人を上から見下すような侮蔑的な視線、そして反応を楽しむかのように横目でちらちらと顔色を窺ってくる。飛びぬけた金持ちに生まれたが故の少年の性癖。男には少年が果たしてこれで幸せなのだろうかと疑問に思った。
「もーっ。さっきから何で黙ってるの? うーん、あ、そうだ! 今からお兄さんの考えていること全部当てちゃうね。あのね、ボクはねエスパーになるための超能力の訓練受けているんだよ。未来を予知したり、透視したり、他人の心を読んだりね。ねーねー、ボク偉いでしょ?」
さとるは甘えるような声を出した。が、男にはまるで無関心な弁論だった。超能力というくだらない似非トリックに夢を見続けている。やはりこの少年は大人びて見えても中身は子供なのだなと思った。実にくだらない子供の夢――。
「えーっとねぇ、お兄さんの血液型はAB型でぇ、特技はあやとりでぇ、趣味はぁ……」
さとるはずらずらと並べ立てたが、何一つ男に当てはまるものは無かった。心を読むなんでありえない。そう二次元の絵空事でしかありえないのだ。
「ねっ、これだけ言ったんだから、どれか一つは当たったでしょ?」
男は無視を決めん込んだ。こんな価値観の違いすぎる子供と話すことは何もない。
「あれあれ? 当たらなかった? ぷーっ、嘘つかないでよ? ボクは心が読めるんだからね!」
単純な自己矛盾に気づいていないのだろうか。男は呆れてものも言えなかった。子供の扱いは徹底して無視するに限る。いちいち構っていては余計な神経を使うだけだ。
「あーあ、なんか飽きちゃったなぁ。お兄さんが乗り気じゃないからいけないんだよ。ふふーん、ねぇお兄さん? このボクを退屈させちゃ駄目だよ。そうそう、いいこと思いついた。楽しいゲームをしようよ! お兄さんがボクの家来になってね、ボクに靴下をに履かせるゲームだよ。上手にできたらねぇ、ボクがお兄さんの頭なーでなでしてあげる。どう? 楽しそうでしょ?」
何を馬鹿なと思った。この状況で高圧的な態度。この少年はここが何でも思い通りになる自分の屋敷か何かと勘違いしているのだ。男はさとるの耳障りな声を聞いているうちに、鬱屈した感情が溜まっていくのである。
「ほらボク脱いじゃったよ。早く早くぅー」
さとるはベッドの上で素足で両脚をバタバタさせる。男は何とか負の感情を押さえ込む。
「お兄さん、してくれないの? ほらっ、ほらっ!」
さとるは何を思ったか、両手で合わせて二回をぱんと打ち鳴らす。
「家来はボクが二回手を叩いたら、直ぐにご奉仕するんだよ? わかった?」
また二回手拍子。男は辛抱出来なくなってきた。常に上から目線のこの態度。うるさいうるさい。男の中で何かが爆発した。この世間知らずのお坊ちゃんに、少し世の中の厳しさを教え込まなくてはならない。
「きゃうん!」
さとるは女の子のような声を出して、ベッドに押し倒されていた。
「お、お兄さん、ちょっと、痛いよぉ……」
男のゴツゴツして血管の浮き出た両手がさとるの両肩に圧し掛かっている。少し力を加えれば脆くも破壊されてしまう柔らかい骨。男は適当な力加減を加えて、少年への制裁を開始した。
「い、痛い! 折れちゃう、おれ、折れちゃうからぁ!!」
さとるの精巧な顔面が苦痛に歪む。涙が目の端から溢れ、顔の筋肉が小刻みに震えている。立場をわきまえずに侮辱した罪は重い。男は少年の悲痛な叫びを楽しみながらゆっくり弄んだ。
「ゆ、許して、ボクが、悪かったからぁ! ごめんごめんもうしません、お願い、助けて、お兄ちゃん、お兄ちゃん――――」
男はもう十分だろうと思い手を緩めた。これで当分の間静かになるだろう。
「――ぐすっ、ぐすっ、う、う、う」
さとるはベッドの端で体育座りをしてぐずっている。しゃくりあげる度に白い脚がゆらゆらと揺れていた。
男がさとるを叱り付けてからというもの、数十分は平和な時間が訪れた。男は仲間の交渉がうまく行くまで監視し続けるだけであった。
さとるはすっかり大人しくなっている。あれだけ恐怖を与えたのだから無理は無いと思った。下を向いてしょんぼりとしている。押さえつけた時に破れたのか、上着が破れて白い肩が剥きだしになっていた。
「あー、ううう……」
突然さとるが奇妙なうめき声をあげた。もしかして加減を間違えていたのかと、男は心配になった。
「どうした?」
男はベッドに飛び乗って言った。
「えへっ、お兄ちゃぁん……」
男はふんわり抱きすくめられていた。風俗街の娼婦が好むような、淫猥な匂いの香水が男の鼻腔をくすぐる。一瞬意識が遠くなる。脚を絡められて、すべすべの手で顔を撫で回されて、木目細かい肌で頬擦りされる。
「くそっ! 離れろ小僧。気持ち悪い真似をして何のつもりだ? もう一度痛い目にあいたいのか?」
男は苦労なくさとるを振り払う。服に染み付くような甘い香水匂いと、白い肌のねっとりとした感触が男を未だ酔わせていた。
「ううん、ボク、お兄ちゃんのこと好きになっちゃったのぉ……」
「な……?」
何なのだろう。訳が分からない。
「ボクのこと誰も叱ってくれないからぁ。お兄ちゃんに折檻されてボク嬉しかったのぉ。屋敷のみんなはボクのこと腫れ物に触るみたいに扱うからボクつまんなくて……。ねっ、お兄ちゃん? ボクのことが気になるからあんなに本気で怒ってくれたんでしょ? あのまま犯してもよかったんだよ? ボクそういうの好きだから……」
さとるの人差し指が男のわき腹をネジのように抉る。くすぐったいような気持ち悪いような感触に男は思わず飛び上がった。
「触るな! 俺にはそんな趣味は無い。はぁっ、はぁっ」
「ふふふ、どうしたのぉ? 息が荒いよお兄ちゃん。あっまたぴくんて反応した。えへへ、さっきもお兄ちゃんって言われて手を緩めてくれたよね? お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん……。お兄ちゃんって言われるとお兄さんは感じちゃうんだね。どうして? ねぇどうしてなのかボクに教えてよお兄ちゃぁん……」
再びさとるの体が男にしなだれかかってきた。柔らかそうな肩から細い鎖骨が覗く。その下を見下ろすと滑らかな白い肌にあばらが浮き、胸の先には、妖しく尖った薄ピンク色の乳首がつぼみをつけている。男はこの絶景に打ちのめされていた。お姫様と見紛うほどの美少年が目を涙で潤ませて見つめてくるのだ。香水の淫蕩な空気も鼻から耳から喉を通り脳を直接侵した。特に幼児性愛の性癖が無い男にとっても、これはあまりにも目の毒だった。
「あれぇ? さっきみたいにおしおきしないのぉ? じゃあ、ボク、お兄ちゃんのこと食べちゃおうかなー」
男は天涯孤独の身である故、親兄弟も存在せず、お兄ちゃんなどと甘えた声で言われるのは初めてのことだった。男の脳はさとるの声によって不思議な安心感を感じてしまう。抗おうにも抵抗できない。蛭のように皮膚に吸い付かれて、弄ばれ狂わせられながら血液を吸い取られていくしかないのだ。
「あっお兄ちゃんボクの裸見てオチンチンパンパンにしてる。ズボンの上からでもわかるよ? ふふふ、苦しそうだねお兄ちゃん。お兄ちゃんはボクみたいな可愛い男の子に欲情しちゃうんだね……」
「ち、違……」
「ん? なぁに聞こえないよ?」
男は否定の声も出せない。さとる少年の柔軟な人差し指が、男のテントをつんと刺激する。
「あ、あ、ああん。ピクピクして面白いねー。このままボクの手でつんつんされてお漏らしちゃうのかな?」
たまらず男は悶絶する。ペニスの先から先走り汁がじんわりと漏れる。
「くすっ、いい顔になってきたね。ねぇお兄ちゃん、お兄ちゃんにボクのこともっと知って好きになって欲しいなぁ……。あのね、ボクには一個下の妹がいるんだけどね、とっても可愛いんだよ。でもちょっと無口で無表情なのが玉に瑕だけど、ボクにそっくりで、ふふふ、ねぇここから助けてくれたらぁ、ボクの女装した格好でHなことしてあげてもいいよ? すごいんだよ、ボクが妹の服着て歩いても誰もボクだって気づかないんだからね……」
そうだった。男は自分が何をしていたか思い出した。このガキを捕まえて身代金を要求して。少年は男を妙な色気で誘惑してたぶらかそうとしている。男は少し目に光を取り戻した。
「駄目ぇ、お兄ちゃん、ボクのことだけ考えてぇ……。ほらぁ、ボクこんなにお兄ちゃんのこと愛しているんだよぉ……」
男はさとるを突き放そうとしたが、わき腹に固いものが押付けられる。まだ未成熟な大きさのさとる少年のペニス。本来ならば忌避すべき同性の性器、だが中性的な女神の愛欲に惑わされた男にとっては、愛の暴力そのものだった。
「ほらほらぁ、熱くて固くて……。ボクお兄ちゃんみたいな強い男の人が好きなのぉ。ボクお兄ちゃんになら何されてもいいよぉ……」
半ズボンの下からでも熱く脈打つ鼓動が伝わる。眩しいほど光る白い脚が目に入る。そして細い肩幅と小さな顎。男は突然唇を奪われていた。
「んっ、んんっ、ちゅっ、好きっ、好き好きぃ! お兄ちゃんのことだぁい好き……」
唇を閉じようとしても容易く割られてしまう。あまりにも美しい女神が男の視界占めていた。狂おしいほどに舌を吸われ、媚薬となり得る唾液を注ぎ込まれる。男は年端も行かない少年に翻弄されて弄ばれていた。ガッチリとした筋肉質の屈強な男が、痩せ細った少年の手練手管によって自由を奪われている。その絵柄はなんとも形容し難い光景だった。
「あーん……。んふっ、お兄ちゃん、目がとろんってなってきたね……。今が食べごろ、可愛い……」
さとるが紅潮しきった顔で見つめる。
「ねぇお兄ちゃぁん……、ボク聞きたいことがあるんだけどぉ……。お兄ちゃんの兄弟はいるの? ふぅん、じゃあじゃあ、子供はぁ? うん、わかったよ。お兄ちゃん苦労したんだね、よしよし。ねぇボクお兄ちゃんのためにぃ、お兄ちゃんの弟か子供になってもいいよ。女の子の格好しても不自然無い、とっても可愛くてHな男の子。お兄ちゃんを虜にして誘惑しちゃういけない男の子。もしボクがお兄ちゃんの子供だったらぁ、お父さん? パパ? あはは、何か変な呼び方だね。やっぱり弟になってお兄ちゃん……って呼びたいなぁ……。どっちにしろ近親相姦になっちゃうけどいいよね? だってボク達は愛し合っているんだもの……。ねーお兄ちゃん……」
男はさとるに耳元で長台詞を聞かされて、脳がドロドロに溶ける思いがした。さとる少年に支配されたい、淫らなことをされたいという思いだけが脳内を駆け巡る。
「あはっ、お馬さんお馬さんー!」
仰向けになった男の上にさとるが馬乗りになる。固くテントを張った男の上に、きゅっと引き締まった少年のお尻がぴったりとはまってしまった。さとるはズボンの上からペニスを押しつぶしたりして快感を貪ろうとする。
「ボクのお尻柔らかくて気持ちいいでしょー? でもまだイったら駄目だよ? 勝手にイったらきつーいお仕置きが待ってるからね。あ……、お兄ちゃんのオチンチンの先が、ボクのお尻オマンコの入り口につんつんしてる。つんつん……つん……つんつんつん……。ふふふ、実の弟にのオマンコにオチンチン入れちゃいたいのぉ? お兄ちゃんは変態なんだね……。いいよボクの中に入れても。そういえばお兄ちゃん男のお尻にオチンチン入れたことないでしょ? ボクがお兄ちゃんの童貞もらってあげるね……。近親相姦で弟のオマンコに見境なく射精しちゃうお兄ちゃん。くすくす……」
男の上でさとるはいやらしい上下運動を繰り返す。ただし男をイカせないように絶妙の間隔を保っていた。
「ねぇー、こんなに寸止めされたらおかしくなっちゃう? もっとおかしくなっていいよお兄ちゃん。ぎゅーーっ。ほらぎゅうぎゅう。ボクのお股にお兄ちゃんのオチンチン挟んでボクのも一緒に押付けて……。ほらぁ、ボクもすごいHな気分……。ぁん……あああん……」
さとるの責めは止まらない。男は我慢汁でズボンに恥ずかしい染みを広範囲に作っていた。
「ふふふ、苦しいお兄ちゃん? それともこれが癖になっちゃってカイカンになっちゃうのかなぁ? ……ねぇお兄ちゃん……。実の弟の頼み聞いてくれる? 大事な大事な世界でたった一人のボクの願い……」
さとるは急に表情を変えて、男に首を回して耳を甘噛みしてくる。男は恍惚の表情で意識を天に昇らせている。
「この部屋の外に四人、悪ーい男の人がいるんでしょう? その中の一人がね、とっても黒いオーラを出しているの。きっと分け前を独り占めしようとして、お兄ちゃんを殺そうとしてくるからぁ……。ねっ、わかるでしょお兄ちゃん? 殺される前にこっちから……ね? ついでだから四人みんなまとめて……。ボクのお願い聞いて欲しいなぁ……。はむふぐ、お兄ちゃんのお耳おいしい。駄目? ふふふ、駄目って言ってもうんって頷くまで舐め舐めしちゃうけどね……」
耳たぶを齧られ頬をベロリと舐められても、男の最後の理性は頑なに保っていた。どんなに地に堕ちても人として超えてはならない一線。男は何とかしてそこを踏みとどまっていた。
「お兄ちゃん。みんな殺してくれたら、いいことしてあげるよ」
さとるは男の膝の上に座るような形で腰を下ろした。可愛らしいお尻がまたもやすっぽりと男自身を包む。
「うぁぁ……」
「ふふっ、ボクのお尻ですっかり骨ぬきだね。ほら、ほらぁ! 堕ちちゃえ堕ちちゃえ!」
前後に体を揺すられると男はもう耐えられない。さとるが後ろを振り向き、鋭い視線で男を射抜く。幼い悪魔の誘惑に、男は一方通行の契約せざるを得ない。
「お兄ちゃん……。ボクの騎士(ペット)になってぇ……」
半裸の少年に尖った乳首。男は少年の体全体を舐めしゃぶってついに忠誠を誓った。
部屋の壁には四人の血しぶきがこびりつき、現場の凄惨さを物語る。古明地さとるの傀儡となった男は、気がついた時には仲間だったはずの四人を殺してしまっていた。誰を先に殺したかどうやって殺したかは全く覚えていない。さとる少年の命令されるがままに的確に業務を遂行したのである。
「よくやってくれたねお兄ちゃん。さすがボクの見込んだペットだよ」
生まれたままの姿でさとるが手を広げて待っていた。淫猥な笑顔も男にとっては天使の微笑みに等しい。
「ふふっ、ボクのおっぱい吸ってみる?」
中性的であばらが浮く身体、さとるは胸周りの少なめの肉をぎゅっと手で探り寄せ、擬似的な膨らみを作って男を挑発する。
「……あっ、あん、あん、もう、お兄ちゃんたらそんなに必死で吸って、甘えん坊さんなんだね」
薄ピンク色の突起に男は一目散にすがりついていた。さとる少年の嬌声に男の喜びは最高潮に達する。
「お兄ちゃんも脱いで、さぁこれからとっても楽しいことをしようか?」
さとる少年はくるりと後ろを振り向いて壁に手をつく。赤子のようなぷりんとしたお尻が男の目を釘付けにした。
「お兄ちゃぁん……後ろからハメハメしてぇ……」
悪魔の囁きとわかっていても男は聞き入れるしかない。男がはそそり立った剛直を少年の肛門へとあてがう。
「優しくしてね……お兄ちゃん。ほらボクのオチンチンも手で握ってくれると嬉しいな……」
男は言われるがままに優しくさとる少年のペニスを握った。脈動する意識、幼い秘裂を押し広げて淫らな性行が始まる。
「あ……、お兄ちゃんが入ってくる。ボクの中がお兄ちゃんで満たされちゃう。おっきぃ! こんなに大きいの初めてだよぉ……! あ! もっと優しくしてお兄ちゃん。あん、あん、あん、め、捲れちゃうから、そんなに乱暴にしたらお尻の穴捲れちゃうからぁっ!!」
二匹の獣の荒々しい性行。男とさとるは同時に絶頂に達していた。淫らな肉穴から溢れ出る白く濁った精液。さとる少年はそれを見て満足そうにほくそえむのであった。
誘拐事件は犯人側からの連絡が取れなくなり、人質の安否が気遣われたが、ある町外れの道路で泣いているさとる少年が無事保護された。少年の言により拘束されていた場所が明らかになり、四人の犯人であろう男達の死亡が確認された。首の骨が折られていたり、拳銃で頭を撃ちぬかれていたり、仲間同士での諍いということで決着がついた。犯人は四人で全員が死んでいた。自殺でなければ他にもう一人二人いるのではと推測されたが、上部からの圧力により黙殺された。
事件から早くも数週間が経ち、誰もがそれを忘れようとしていた。
古明地家の秘密の地下室。さとる専用の遊び場に成人の男とあどけない顔の少年が三人。
「きゃーー、ぬえちゃん上手ぅ……。ボクにもして欲しいなぁ」
「へへっ、さとる君だって、とってもHだよ」
誘拐事件の犯人の一味であり、さとる少年にまんまと籠絡された男が床に転がっていた。黒い髪に黒のワンピース、そして黒のニーソックスといかにも小悪魔といった装束に見を包んだ少年――封獣ぬえが男のペニスを脚で弄んでいる。
その脚責めに白いタイツのさとる少年の綺麗なおみ足が加わっている。女装したさとるの容姿はどうみても女の子そのものだった。どうやら今日のコーディネートは園児服らしい。小柄な体格にひらひらした上着とスカート、さとる少年はいつもよりも自分を幼年化させて役になりきっている。
「ねぇねぇー、フランちゃんも見てないで一緒に踏み踏みしようよ。どうせオチンチン固くしてるんでしょ?」
さとるに声をかけられたのはフランドール。金髪の赤い瞳でどこか色々混じっているらしい。フラン少年はこの行為をじっと見ているだけである。彼は極度の恥ずかしがり屋さんなのだ。もじもじとして反射的に勃起してしまったペニスを自分でいじっている。
「あーっフランの奴ボク達の方見て握ってら! ムッツリフランちゃん! あはは、後でたっぷりお仕置きしてあげないと! ねぇさとる君?」
「そうだね。フランちゃんには可愛く泣いてもらおうかなー」
「ぬ、ぬえちゃん、さとる君、ごめんなさい、ボク……」
涙流すフラン少年。姉のタンスから借りたという洋服を濡らす。
「もう謝っても遅いよ! そうだフランのお姉さんにばらしちゃおうか! フランは女装して男の子とHなことする変態だって! そうしようそうしよう!」
「そ、そんなぁー。これがお姉さまにばれたら……。ボク、ボク……。うわぁあーん!」
泣き出すフランを見ながら、さとるは男の亀頭を入念にいじめて射精へと導いていた。犯罪者として世間から追われるよりは、こうして自分達の慰みものとなった方が幸せであろう。白いタイツとぬえの黒いニーソックスに男の命の結晶が飛び散っていた。奴隷はいつの時代も足元に跪く運命にあるのだ。
「あーあ、もうイっちゃったね。さとる君、こいつが回復するまでボク達で遊んでよーよ。キスしよ! キス!」
「う、うんぬえちゃん!」
二人はフランを無視して唇を奪い合い、幼い性器をつつき合わせる。魔性の少年達の饗宴はいつまでも終わらない。
~ショタぷに編~
第五十二期幻想郷内閣、毘沙門天代理秘書官――寅丸星は幻想国会議事堂の一室で、積もり積もった書類の整理に追われていた。
彼は元々は虎の妖怪であったが、その生真面目さと人柄のよさをかわれて現在のポストに至る。星は類稀なる勤勉な青年である。きりりと引き締まった口元に落ち着いて澄んだ眼差し。精悍な顔つきで若干線の細さを感じさせる部分もあるが、内から染み出る生来の純粋さにより幅広く人々の信頼を得ていた。
「ふぅ、この件に関してはこれでいいでしょう。さてと次は……」
そう一人ごとをつぶやきながら、とんとんと肩を叩く。
「そういえばナズーリンはどうしたんでしょうか? 急ぎの仕事を頼んでいたはずなんですが」
星にはナズーリンという部下がいる。多少口は悪いがよく細かいことに手が届く、優秀な人材で、星自身も彼には厚い信頼を寄せていた。ちなみにナズーリンはネズミの妖怪で性別は雄である。
すっと立ち上がり部屋から出ようとする。ナズーリンを呼びに行くためだ。彼が時間を守らないことは今までに一度もなかった。これは何かが起こったのかと心配になってしまう。
星は外面は立派に保っていても実は小心者だった。己の卑小さを真面目に取り繕うことで、何とか体裁を保とうとする。本当は今のポストも自分には大役すぎると思っていたのだ。重しのようにのしかかる責任が、精神をじわじわ蝕みそうになってたまらない。
そんな中でナズーリンは星の心の支えだった。同性故になんでも気兼ねなく相談できる人物。書類や小物をなくした時にも、いつでも即座に見つけてきてくれる。星はナズーリンに何度窮地を救ってもらったか数知れなかった。
「ん? 何だこの扉……開かないな」
ガチャガチャと取っ手を回す。押しても引いても動かない。どうやら外から大きな力で塞いでいると思われた。
「何ですか、こんな忙しい時に。一体誰の悪戯……」
「僕だよ、お兄ちゃん」
突如後ろから幼い声が聞こえた。振り向くと、黒い短めのワンピースに身を包んだ、十歳ぐらいの少女がちょこんと椅子に腰掛けてくつろいでいた。黒光りする細い髪が頬と肩にゆるりとなびいている。少女の頬はふっくらとして実に健康そうで、表情は常にはにかんでいた。
「ねね? お兄ちゃんって偉いんでしょ? それなら僕とちょっと遊ばない?」
少女は悪戯っぽく笑った。大人を小馬鹿にしてくるような、どこか悪意のある笑顔だった。
星は少女が自分のことを僕と言っているのが少し気になった。しかしこの年頃の少女ならばそれもありかなと思った。
「ふふっ、ねぇー何か言ってよー」
妙に肉付きのいい太腿が目に入った。黒のニーソックスに包まれて、その曲線ラインは少女とは思えないほど艶かしく扇情的だった。引き締まった足首からじっくりと見上げていくと、少女の足の美しさがよくわかる。脹脛からむっちりとした膝小僧、太腿から白い素肌までその美観は続いていく。
短いワンピースの裾とニーソックスとの神聖な、ある種官能的な絶対領域が星の心をくすぐった。少女のあどけない顔のギャップと相まって、星は一瞬淫らな煩悩に飲み込まれそうになった。
「あれぇ? お兄ちゃんもしかして……」
少女は座ったまま両膝の後ろに手を回して、二本の足をぐっと持ち上げた。黒い肉の建造物が視界を覆い、黒い裾の奥の暗がりからともすれば神秘的な空間が見えようとしていた。顔色を窺えば、舌をぺろっと出して誘うような淫靡な表情。これが幼い少女の所作だとはとても思えなかった。
「こらこら、どこから入ってきたんだい? ここは君のような子供が遊ぶような場所じゃない。さっすぐに出て行くんだ」
星は頭を一振りして、規定通りの行動を義務的に遂行しようとした。こんな少女がここにいるのも不自然、奇妙な媚態を示すのも全て不可解だったからだ。
「そんなこと言わないでさぁ。お兄ちゃん、僕とお話しようよ。ねっ、僕お兄ちゃんと仲良くなりたいの」
少女は聞き分けがなかった。しかも足はまだ持ち上がったまま。黒いにょっきりと突き出た足が揺れている。つま先をくねくねと動かされて、少し埃がついた足裏を見せ付けられて――。
「な、何をしているんだ。早く足を下ろしなさい」
「どうして?」
「どうしてって……」
星は言いよどんだ。この少女のペースに危うく乗せられそうになっていることに、気持ちの悪い恐怖を感じていた。白い肌に真っ黒のワンピースにニーソックス。まるで人を騙す異界からの悪魔のような姿である。コロコロと笑いながら、こちらの心の隙間に侵入しようとしてくる。
「とにかく出て行きなさい。全くこの忙しい時に……」
星は少女から目を逸らして言った。触覚のような黒い足を見続けていると、淫らな妄想に取り込まれそうになってしまうのだ。
「うーん。お兄ちゃんが遊んでくれたらいいよ?」
「何を馬鹿な……」
横目でチラッと少女の方を見る。足は体育座りのように、椅子の上で綺麗に整列されていた。黒の装束と対比して、白い太腿が眩しかった。
「いいから出て行くんだ!」
星は妙に焦っていた。むちむちとした少女の足が、どろどろとした脳内の感情を煮えたぎらせ、行き場のない焦燥感となり強制的な行為となって現れた。
「ああん! 痛いっ……」
思わず少女の細い肩をつかんでいた。無理やり立たせて部屋から引きずり出そうとした――が、それは数秒後に愚かな行為だと星は知ることになる。
「うわぁん……お兄ちゃんやめてよぉ……」
「はぁ……はぁ……」
少女は上目遣いで、雨粒のような涙を目にいっぱい溜めて見上げてくる。たまらず肩をつかんだ手は緩んだ。
「ふふっ」
星が手を離すとまた少女は微笑んだ。演技だったのだろうか? まさか自分がこんな年端もいかない少女に弄ばれているとは。どう対処したらいいのか星はわからなくなった。この状況は何かがおかしい。
「あーあお兄ちゃんいけないんだぁー。ちっちゃい子を部屋に連れ込んで、ぼーりょくこういしちゃったね。うふふっ。これから僕を裸にしてごーかんとかしちゃうのかな? 新聞屋さんに言ったら大変だねお兄ちゃん? 淫乱行為でお縄にちょうだい。それだけじゃないね、周りの信用してくれた人達も裏切っちゃうんだからね。せっかく築き上げてきたクリーンなイメージが台無しだぁ。えへへっ」
「何を言っているのです。私はそんな……」
そんな――いや、自分は一瞬でも幼い少女の魅力に心をほだされていた。衝動的な感情に身を染めて、手加減もせず肩をつかんでしまったのだ。星は自分を責めるのが先だった。彼の生真面目さが少女の言に反対する術を失っていた。
「ねっ、お兄ちゃんがあんまし強くつかむもんだから、きっと僕の肩に痣がついちゃってるよ? いけないんだぁお兄ちゃん」
「やっやめてください……、すいませんでした……謝りますから……」
星はプライドも捨てて少女の前で頭を下げていた。それははたから見ればありえない光景であったが、当の本人にとっては真剣だった。少女の高圧的な態度、そして人の心を操る悪魔のような容姿にとらわれていた。
「えーお兄ちゃんったらそんなに早く謝っちゃうんだ? もー幻滅しちゃうなぁ。お兄ちゃん偉いんじゃなかったの? あはは……」
少女の罵倒も星は甘んじて受け入れた。自分だけでなく周囲に迷惑が及ぶのはどうしても避けなければならなかった。床にしっかりと額をつけて、律儀で妥協のない土下座をする。
「うーん……。そんなに謝られても僕困るんだよねぇ。ねっ遊ぼうよお兄ちゃん? そしたら許してあげるからさ!」
「わかりました……」
星はいつの間にか少女に対して丁寧語になっていた。そうしなければならないという義務感。絶対に覆せない階級差という存在を植えつけられていた。
「ふふっいい子だね。何か従順すぎてつまらない気もするけど……。そうだ、まだお互いの名前教えあっていないよね。僕はぬえって言うんだよ? 可愛いでしょ? ねぇ君のお名前も教えて?」
「寅丸……星です」
星は声をかすれさせながら言った。床に座ったまま顔をあげると、ぬえと名乗った少女が勝ち誇った目つきで見下ろしていた。ぴったりと組まれた足のつま先が、星の目の前でゆらゆらと揺れていた。
「そう……、じゃ、お兄ちゃんは今から星ちゃんって呼ぶことにするね。僕のことはぬえ様って呼ぶんだよ? いいね? ほらわかったならちゃんと言いなよ!」
そう言ってぬえは足裏で星の顔を踏んづけていた。黒の淫靡な視覚効果とサラサラとした薄い布の感触、それに加えて少女の分泌物で蒸れたほのかな芳香とが混じり合い、至極倒錯的な感情に落とし込まれていた。
「はい……、ぬえ様……」
「そんなんじゃ聞こえないよっ!」
ぬえはぐりぐりと力をこめて更に顔を踏みしめる。もう一本の足も加勢して、甘ずっぱい香りで脳髄を痺れさせ支配しようとしてくる。
「ほらほらー。僕の足裏いい匂いでおかしくなっちゃうでしょ?」
「はい、ぬえ様ぬえ様……」
星は必死に足裏の蹂躙を享受していた。誠意をこめて真面目にやれば誰でもわかってくれる。その考えに基づいて今も行動していた。
「いい子だね星は。さて次は口を開けて僕の足を舐めるんだ。いい? いっぱい開けないと僕承知しないからね」
「はい……、んぐっ……」
めいいっぱい口を開けたつもりだったがまだ足りなかった。ぬえは容赦なくつま先を越えて足を入れようとしてくるのだ。
「歯をたてたら駄目だよ? つま先全体をねぶるように舐めるんだ。そーうそうそう……。優しくねっ、ご主人様には絶対服従なんだからねっ」
「は……む……ふぐっ」
ちゅぱちゅぱといやらしい音と涎を滴らせながら、星は必死でぬえの足を舐めた。黒い布にねっとりとした唾液が染み込んでいく。
頭がぼうっとして定まらない。何故自分はこの少女のつま先をくわえているのだろうか。わからないわからない。考えようにも視界は黒い太腿に覆い包み込まれて、思考の介在する余地はない。
数分その足責めは続いた。星は顔を涙と汁で汚しながらも、不思議な恍惚状態に陥り、少女に踏まれ弄ばれることが快感になっていた。
「ふーん段々いい顔になってきたね。ねっ次はここに来てもらおうかなー。ほらっ、ここだよ……」
「ううっ……」
ぬえが両足を広げて誘っている。M字に開脚されむちっとした太腿の終点には白い布が見えていた。心なしか妙に膨らんでいた。少女にしてはあまりにもおかしすぎる――。
「どうしたの星ちゃん? あれあれ? あそっか! 気づいてなかったのかな? 最初から僕って言ってるのにもう……。そう僕は男の子だよ。可愛い可愛い、女の子よりも素敵な男の子。ふふふっ」
なんてことだと星は思った。こんなしなやかで肉づきのいい身体をした子が男の子とは。
星はふと頭が冷静になった。どんなに可愛くても鼻たれた餓鬼だと思えばいい。そうだ、こんな坊主なんかすぐにほっぽり出してやればいいのだ。
「ふっ……、もういいでしょう。遊びは終わりに……ふわぁっ!」
「お兄ちゃん♪」
「お兄ちゃん好きだよっ♪」
立ち上がろうとすると、突然後ろから組み敷かれていた。今まで喋っていたぬえと同じ声だった。何が起きたか一体全体わからない。
「今逃げようとしたでしょ? 駄目だよ星ちゃん。三つ子だけど三つ子じゃないよ? 僕達は異星人の大いなる意識の集合体――人呼んでぬえ。どう? かっこいいでしょ?」
「何を言っているのです早く離しなさい。あんまり大人をなめると……」
「あれぇ? ぬえ様に忠誠を誓ったんじゃなかったの? もう、面倒くさいなぁ、ふふふっ。それっ、みんなでやっちゃえ!」
背中にのったぬえと同じ顔の生き物が、ぷっくりとしたほっぺを星の顔に押付けてきた。両側からむにむにと押し込まれて抵抗する気を失いそうになってしまう。
「やめっ、やめなさいこらっ!」
「何でぇ? ほーらほら」
「ぷにぷにしてて気持ちいいでしょ? ぷにぷに、ぷにぷに……」
男の子とは思えない吸い付くような肌。星は起き上がろうにも指一本動かせなかった。
「どう? 僕らのぷにぷには? ぷにぷにされるとみーんな力が抜けて素直になっちゃうんだよ? 僕達はこのぷにぷにでこの国を支配するって決めたんだ。星ちゃんは犠牲者第一号! 国の中枢がこんな人材じゃ支配も簡単だね! ふふふっ」
「何を言っているですか。誰がこんな……」
「こんな男の子にって? ふふん星ちゃんが言う資格はないよ。だって僕のこと女の子だと思って、ぬえ様ーって呼んで足舐めてはぁはぁしてたんだからね。僕らのぷにぷにパワーにかかればみんな骨抜きになっちゃうんだよ。星ちゃんもぉ、僕のHな足見てオチンチン腫らしちゃったんでしょ? わかるよ僕。だって同じ男の子だからね……」
そう言ってぬえはニヤリと笑った。確かに星は勃起していた。少女と錯覚していた男の子の痴態に勃起せざるを得なかった。
「しかし……」
「言い訳は聞きたくないよ星ちゃん。男の子の身体に欲情して淫行に及んだのは紛れもない事実だから。星ちゃんはもう最初から負けているんだよ? ほらぬえ様っていいなよ? ご主人様の名前を呼んでよほらぁ、ほらぁー」
「そーだ言うんだ!」
「お兄ちゃん言って? 僕達のために……」
「やめなさい、やめなさい……」
三人のぬえ達は星の体をめちゃくちゃに弄んだ。足でぐりぐりと踏みつけて尚も服従させようとし、両側からは可愛らしい唇で頬や耳にキスをして蕩かそうとしてくる。
「ぷ~にぷにぷにっ」
「ほら、どんどんぷにぷにが好きになっちゃう」
「ぷにぷには絶対的なんだよ星ちゃん。逃げようとしても逃げられないんだ。この国の雄はみんな僕達ぬえとしか性行できなくなってしまう。何故なら僕らはとっても可愛くてぷにぷにだから……。普通の生殖行為ができなくなったらその種族は終わり。この国はぬえが支配するんだ。生き物全てはぬえにすりかわる。それがぷにぷにのさだめなんだよ」
「意味がわかりませんし、回りくどすぎます……。それより早く私を解放しなさい!」
星はどうにか気を保って言った。少しでも気を抜けば圧倒的な肉感に押しつぶされそうだった。
「まだ言うかっ。よしみんな、星ちゃん裸にひん剥いちゃぇ! いっぱい泣かせてよがらせて従わせるんだ!」
「はーい。ほらお兄ちゃん、脱ぎ脱ぎしようねっ。僕達も一緒に脱ぎ脱ぎするからさ」
「脱ぐとぷにぷにがもっと直に伝わって気持ちいいよ~」
瞬く間に脱がされてしまった。このぷにぷにというものは、星は心底恐ろしいと思った。
星は椅子に厳重に縛り付けられていた。もちろん生まれたままの素っ裸の状態である。
「あああ……、どうしてこんなことに……」
涙目であった。星はくやしくて仕方がなかった。異星人とはいえ幼い子供、しかも少年の姿をした生物に手篭めにされてしまうとは。これでは先祖に申し訳がたたない。
「さぁーって、もうみんな準備はできたかな?」
三人のぬえの中の一人が言った。もう混ざり合って、どれが最初に星を襲ったぬえであるかわからなかった。
「無駄ですよ。私はいたって健康な青年男子です。変な性癖なんかありませんから」
星は凛とした声で言った。やはりここでも彼は真面目であった。
「そんな格好で言っても説得力ないよ星ちゃん。裸で椅子に座って……ふふっ」
「裸ー裸ー、僕達と一緒の裸だねお兄ちゃん」
ぬえ達が笑いながら言った。
「あの、一つ言いたいことがあるのですが……」
「何星ちゃん?」
「何で君たちは中途半端に脱いでいるんですか?」
そう、ぬえ達は完全な裸ではなかった。三人が三人とも黒のニーソックスを履いたままなのである。胸からお尻まですっと緩急がなく、丸いお腹にポチッとしたおへそが愛らしい。幼児体型のぷくっとした身体を見れば、本物の少女に見えてしまうが、股間から生えた突起物が異様な違和感を醸し出している。
ともあれ裸にニーソックスはどうしても抗えなかった。足の肉づきだけは妙に艶かしくいやらしい。それを際立たせる布一枚の存在。そしてそれ以外は素っ裸というアブノーマルなシチュエーションが、星の嗜好的に少なからず合致していた。
可愛すぎるのだこの男の子は。初めて誘惑を受けてあっさり陥落したのは自然の摂理である。こんな肢体は反則であると、強引に星は自分に納得させた。
「へへへー、だってこの方が僕達のぷにぷにが目立つでしょ? 星ちゃんも僕のこの足にねっとりと視線送ってきたでしょ? ドキドキした? 頭に血がいかなくなってすぐへなーってなったよね? だから今もこうして……」
三人の目は星の半勃起のペニスに向けられていた。彼らの目的は男の欲望を燃え上がらせることになったらしい。腰をくねくねさせたり自分の乳首をつまんでみせたり。白い頬が紅潮して甘い喘ぎ声があがると、星はどうにも耐え切れなくなっていった。
「お兄ちゃんこっち見てぇ……。僕のHな姿……」
「ふふっ、僕達が男の子なら勃起しないよね? 星ちゃん真面目なんだよね? 最初はふいうちだったけど、今回は言い逃れできないからね? ほらもう一息だ。星ちゃん……僕のオチンチン見て……? 僕星ちゃんのこと考えてこんなに大きくしてるんだよ? 好き、星ちゃん好き……。大好き……」
「やめなさい知りませんそんなもの見たくありません無駄ですお止めなさい。ああ南無妙法蓮華経。立ち去れ立ち去れ」
視覚による誘惑を遮断しようと、星は目をつぶって読経を唱え始めた。星はいつもこうして座禅をして心を静めていた。深い涅槃の境地に近づくことで、自我を保っていたのだ。
「あれぇ? お兄ちゃん目をつぶっちゃった? もしもーし、目を開けてよ?」
「ははっ、好き勝手にしようよ。どうせ僕達には敵わないんだからさ」
「そうだねぬえちゃん。うふふっ」
ぬえ達の声がうるさかった。落ち着け、あの足に惑わされさえしなければ勝機は見える。
「わぁーすごいぷにぷにだね? 触ってもいい?」
「うんいいよ」
「じゃ僕もー、それっ!」
「あっ駄目そこはぁ……、もうお返しだよっ」
「揉まないでぬえちゃん……。変なお汁でちゃう……」
「あんっ、ちゅっ、ちゅっちゅぷ」
「吸ったら駄目だよぉ~」
「ふわ、それ気持ちいい……。もっとぉ……」
「Hだねぬえちゃん。変態だね」
星は目をカッと見開いていた。我慢できるわけがなかった。目をつぶれば少年であるシンボルも消えてしまう。甘い嬌声は少女達の淫靡な語らいにしか聞こえない。
「あはっ、やっぱり目を開けたね。Hなお兄ちゃん。やっぱり僕達の裸見たかったんだぁ」
ぬえの一人が指をしゃぶっていた。ねっとりと粘りつくような視線を送られる。むっちりとした脹脛と膝小僧と太腿と――。駄目だ、この子達は可愛らしすぎる。抵抗なんてできるはずもない。
「あぁ……」
大げさなため息をついて、星のペニスは大きく反り返ってしまった。
「星ちゃん負けたね」
「きゃっ、大きい」
「すごいビクビク」
「僕の足見て興奮しちゃった?」
「違うよ僕のお尻だよね?」
「どう? ぷにぷにはすごいでしょ}
ぬえ達が口々に言った。拘束されて言いたいほうだい言われてぞくぞくしてしまう。マゾ化への第一歩。しかも調教を受けるのはあろうことか男の子に似た生命体である。もう星にはそれが屈辱なのか快感なのかわからなくなっていた。
「それー砦は陥落したぞー。全軍突撃ー!」
「わぁーい!」
三人のぬえが星に覆いかぶさってきた。一人は股間を顔に押付けて、残りの二人は足で星のペニスを弄ぶ作戦のようだ。
「ほらほら、オチンチンぷにぷに……」
「お兄ちゃん僕の足でぎゅってされてる……」
「あーニーソックス汚していけないんだぁー。また罪状が追加されちゃったね」
一度硬く勃起したものは中々元に戻らない。絶えず刺激を送られて破裂寸前の状態にされてしまった。
「やめて、やめてください……、ふむっ、むむ……」
「オチンチンなめなめして? 僕お兄ちゃんのこと大好きだから……」
一度もくわえたことのない他人のペニス。それでも星はさしたる嫌悪感も見せずに受け入れた。これこそがぷにぷにの為せる技だと星は思っていた。ぷにぷにの力に星は感化され始めていた。
「あはは、お兄ちゃんはもう僕達の虜だね……」
「でも楽しいのはまだここからだよ。さてと、一回出しちゃおうか? ほら両足裏でこすられてイっちゃえ!」
二人のぬえの黒い足がぴったりとペニスを取り囲んだ。柔らかい足裏が竿と亀頭を優しく愛撫すると、すぐさま星は高まっていった。
「ああ……。そんな……、足がいい。ぬえ様達の足最高です……」
星の目はどんよりと濁っていた。ぬえの足への崇拝心だけが彼の全てだった。
「ねぇ僕のオチンチンも出ちゃいそう。お兄ちゃんの頬もぷにって柔らかい。んっんっ……」
股間を押付けていたぬえも限界のようだった。四人は興奮の中で一つになろうとしていた。
「ああ……お許しください。んあっ!」
「ほらぷにぷにでイけっ! 心に刻み込んじゃえ!」
「ふふっ、竿から裏筋つーっとコリコリ……。もう限界だね。お兄ちゃんはもう僕達のものだよ」
星は爆ぜていた。と同時に頬に生暖かい白濁液がまぶされる。
呆然とした状態で星は快感の余韻を楽しんでいた。
「お兄ちゃ~~ん。すりすり♪」
「お兄ちゃん好きぃ♪」
「星ちゃんどう? 男の子にイカされちゃった気分は?」
頭がぼけっとして働かなかった。足で性器を踏みつけられる行為――痛くもなく痒くもなくただ心地よい快感だけが残る世界。星はもう性別の垣根なく、黒のニーソックスに欲情するだけの野獣に成り果てていた。
「ううっ、私はなんてことを……」
射精してしばらくするとやや思考が戻ってくる。ここは政をする場所。それを淫らな行為で穢してしまった。星はもうどう責任をとっていいかわからなかった。ぬえ達は異星人と言った。しかも幻想郷を侵略しに来ていると。それ故に今自分がほぼ人質の状態にあることは耐えがたき屈辱だった。
「私をどうするおつもりですか?」
星は聞いてみた。
「うーん、どうするって言われてもね……。ぷにぷになっちゃえば細かいことはどうでもいい。ぷにぷには僕達の本尊なんだよ。だから星ちゃんも……ね?」
そう言って三人は頬を擦り付けてきた。すべすべの手の平や足でも体中を撫で回されてしまう。気持ちよくて蕩けそう――。これがぷにぷにに近づくことなのだろうか。弾力のある餅のような肌。押せば押すほど甘美な反動が跳ね返ってきて、心を酔わせてしまう。
考えあぐねていると、部屋のドアがガチャリと開いた。誰だろう? と思い星は緊張した。自分は今一糸纏わぬあられもない姿なのだ。加えてどこぞの異星人と性行までしている。更に男の子というおまけつきだ。星は目の前が真っ暗になって断罪の時を待った。
「ご主人……」
それは部下のナズーリンだった。しかし何か様子がおかしい。げそっと青ざめて、服が所々破れている。
いやそれどころではない。この危機を伝えなければ。これを見られたのがナズーリンでよかった。ナズーリンならばきっと上手に取り繕ってくれるはず。彼はそういう点については抜け目がないからだ。
「ナズーリン! 早く伝えてください。幻想郷に危機が迫っています。この子達は悪質な異星人です。ぷにぷにを使って支配しようとして……、早く逃げてみんなに伝えてくだ…………むぐむぐ」
星はそこまで言ってぬえに口を塞がれてしまった。ぷにぷにの洗脳は強力過ぎる。自分はもう助かりません。後は頼みましたよ……。
……あれナズーリン? 何でそこでぼーっと立っているのですか? ぬえは危険な生命体です早く逃げないと……。
「ふふっ、僕達が三人だけだと思った? ぬえは一つの集合体なんだよ?」
じっと立ち尽くすナズーリンの後ろから、三つの黒い影が出現した。黒髪にワンピースにニーソックス。やはりぬえだった。ナズーリンは既にぬえの手にかかっていたのだろうか。
「はーい、この子はナズちゃんって言うんだって。あのね、面白いんだよ。ふふふ、僕いいこと教えてもらったの」
ナズーリンの背後のぬえが言った。
「えー何々?」
「へーすごいね!」
「でしょ? だからさぁ……」
「ふんふん……それは名案」
「きゃっきゃっ、楽しそう!」
ぬえ達は六人で急に話合いを始めた。ナズーリンはその間ずっと縛られたように動かなかった。
「ナズーリン……、どうして君まで……」
「ご主人こそ……。うっううう……」
ナズーリンは今にも泣き出しそうだった。星は居たたまれなくなった。ナズーリンさえ篭絡するぷにぷにとは、末恐ろしいものだと星は一人戦慄した。
「決まったよ。星ちゃん。ナズちゃん。」
「何をする気なんです? ナズーリンは関係ないでしょう? 私一人が犠牲になれば済みます。彼は解放してあげてください」
星はせつなげに言った。
「ううん、そんなこと言ってもね。決めるのは僕達なんだよ? さっナズちゃん。星ちゃんに思いを打ち明けるんだ」
「いや……、嫌だ! こんな形で……」
「ナズーリン……?」
打ち明けるとはどういう意味だろうか。星は何も思い浮かばなかった。
「言ってくれないの? さっきは僕達に教えてくれたよね? 勇気を出して言ってみようよ! 大丈夫、僕達は君の味方だからさ」
「それは……その……」
「ナズーリン何ですか? 私は怒っていませんから何でも言っていいんですよ? 上司の私がこの体たらく具合ですからね。示しがつきません」
星は優しく言った。ぷにぷにに侵されかけていても、ナズーリンの真摯な表情が気になった。
「何だ言えないの? まぁいいや。それじゃ二人をやっちゃおうか!」
「そうだね! 僕待ちくたびれちゃったぁ」
「それそれー!」
待ちかねたようにぬえ達は星とナズーリンに飛び掛ってきた。こっちに三人あっちに三人。いつの間にか全員裸になっている。
ナズーリンの小柄な身体も垣間見える。痩せていてあばらが浮いていて、どちらかというと中性的な体つきだった。ごつごつとした感じはあまりなくて、本当の女性ほどではないが緩やかなカーブが見られる。
ぬえは椅子に座った星に前から抱きついてきた。柔らかな感触。これがぷにぷにだ。抵抗できない絶対的な存在。
「入れちゃうよ星ちゃん。僕のお尻の穴に。って言っても性器みたいなものだけどね、僕達はほとんど仙人の霞みたいなものを食べて生きている。とってもクリーンで効率的な生命体さ。だから排泄なんてほとんどしない。この穴も汚くなんかない、いい匂いがしてやみつきになっちゃうんだよ……。さぁおいで星ちゃん。最高のぷにぷにを味あわせてあげるから……」
ぬえの顔が妖しく歪んだ。次の瞬間、星のペニスは肛門の奥深くまでくわえこまれていた。痛みはまるで感じなく、ぬるぬるとした潤滑液が多量に分泌されて、すべりがよくスムーズに順応した。
「うわ……、何ですかこれ……」
「ふふふ、お尻の中もぷにぷにでしょ? 一度ここに入れちゃうともう戻れないんだよ? 奥でぎゅっとされてみっちり埋まっちゃうんだ」
それは極楽の天界だった。ペニスの形状に合わせ粘膜が即座に変容する。優しく包みこまれおびただしいほどの愛液で祝福される。この肉壷の中で正気を保つのは不可能だった。キスをされ胸を合わせて、可愛らしい小ぶりのお尻をつかみ、全身でぷにぷにの素晴らしさを受け止める。
星はたまらず数秒で射精していた。頭が泥濘に落ちるがペニスはまだ怒張したままだった。快感が後から後から押し寄せて止まらない世紀のビックウェーブ。
「あんっ、星ちゃん好き好き!」
「私もですぬえ様っ!」
他の二人のぬえも星の体を弄んでいた。乳首をつねったりお尻の穴を舐めたり。ぬえが好きになって何をされてもよくなっていた。ぷにぷにの魔力は絶大だった。
「やめろぉー! ご主人の前で私はそんなことしたくないんだ! お願いだ……。ご主人にも変なことしないでくれ……たのむから……」
ナズーリンの大声が星を現実に引き戻した。
「えー? さっきせっかくチャンスあげたじゃん? まだ引きずってるの? いいから僕とぷにぷにしちゃえば直ぐにどうでもよくなっちゃうよ?」
「でも、でも……」
何をもめているのだろう? 星は絶望の死に際でも気にかかった。
「気になる星ちゃん? 僕は聞いちゃったんだけど……知りたい?」
「ええ、できれば……」
「うわぁ! やめろやめろ! ご主人には言わないでくれ!」
聞いていたのかナズーリンが大声をあげた。そこまで言われると知りたくなってしまうのが生き物の性である。
「駄目だよーナズちゃん。ご主人様の命令には従わなきゃ。ふふっ星ちゃん、ナズちゃんはね……、星ちゃんのことが大好きなの。愛しているの」
「えっ愛しているとは……? ああ上司として尊敬ですか? いえいえ、私はそんな大それた人物では」
「何ぼけているの星ちゃん。愛しているって恋人になりたいって意味だよ。ナズちゃんはご主人様と恋仲になりたかったの」
それを聞いて呆然とする。意味がわからない。
「いやだって私とナズーリンは男同士ですよ。同性ですからあり得ませんよ、おかしいです」
「あらら、こんな鈍感なご主人様だとナズちゃんも苦労したんだね。教えてあげるよ。ナズちゃんは同性愛者、男の子が好きなんだよ? 星ちゃんずっと気づかなかったの? あーあ……」
「ひいぃ! 星なんかもう大嫌いだ! ううう、うわぁあ――」
ナズーリンは引きつったように泣き叫んでいた。
「泣かせちゃったね星ちゃん」
「そんな馬鹿な……」
星はナズーリンとの記憶を思い返していた。いつも困った時には的確に助けてくれた。それは単なる部下としての行いだと思っていたのだが――。
「さてナズちゃん。告白は終わったようだからここに入れちゃおうか? 僕もう我慢できないんだよ。お尻の穴がきゅんきゅんしてるんだから」
「やめて、やめて……」
「どうしてナズちゃん? ご主人を裏切っちゃうから? もしかして初めて? ふふっ残念でした、ナズちゃんの初めては僕がもらっちゃうね。でもナズちゃんは幸せだよ? 僕のアソコは極上なんだからね!」
仰向けになっているナズーリンの上にまたがるぬえの姿が見えた。ナズーリンのペニスは固く勃起していた。口では嫌がっているがぷにぷにの前ではいたしかたないのであろう。
「こんなにオチンチン固くして……、かつてのご主人様の前で変態なんだね。見られて興奮しているの? ほぅら入れるよ? 裏切っちゃえ! 裏切って僕に屈服するんだ!」
「あああっ――」
ナズーリンがぬえの体内に飲み込まれていく。星は顔を背けていた。涙は不思議と出なかった。
「悲しいの星ちゃん? でももう終わりだよ。ぷにぷにに包まれば全て水の泡。さぁクライマックスだよ!」
「うわっ!」
ぬえの中が一段と強く収縮してペニスを絞り上げた。凄まじいほどのバキュームで飲み込まれそうになる。
「後ろからもいただきまーすっと」
星の体を舐めていたぬえも背後から入れようとしていた。全身はぬえの体液で濡らされて痛みは感じずに、するりと潜り込まれた。入れながら入れられる倒錯的な感覚。何度も何度もぬえの体内に子種を打ち込んだ。気持ちよすぎて終わらないのだ。
「あんっ、孕ませて、僕のこともっと好きになって孕ませてぇ」
「ぬえ様……、ぬえ様……」
星の意識はどろどろに溶けてぬえの体内に吸い込まれていった。
特異生命体ぬえが所有する繁殖用UFO内。その中で寅丸星は生きていた。いや、生きているというより輪廻の鎖につながれて生きながらえていた。
「ぬえ様……、また出ます……」
「星ちゃん、もっといっぱい注いでね。また僕が生んであげるから」
繁殖場の中は異様な空気に包まれていた。ぬえもぬえではなく星も星ではなかった。ただしぬえらしき生命体は新たな命を宿した象徴として、お腹を膨張させながら性行にいそしんでいた。
「ふふふ、意識は連鎖するんだよ星ちゃん。死んでも終わりじゃない。君から放たれた子種は僕達に行き渡り、永遠に流転して続けるんだ。うーん……、でももうこれは星ちゃんじゃないかなぁ? ナズちゃんと僕と混ざりあってわけがわからないや」
ぬえの繁殖能力はずば抜けていた。普通では考えられない周期での妊娠出産を繰り返し増え続ける。おそらくは同じ腹から生まれた兄弟同士でまぐわりあい、更にその子供達も近親同士で交わるのだ。
「ナズちゃんの夢が叶ってよかったね。見てみなよご主人様ともうほどんど同質化してる」
「あー、あー、また出ますぬえ様……」
「いいよ星っぽいナズちゃん。ううん、僕も星ぬえちゃんかナズぬえちゃんかな? まぁいいや」
ぬえにとってはそんな些細なことは問題なかった。ひたすらに生命体の雄を誘惑しその子種を孕み続けて生きながらえるのだ。
「外を見てごらん。この国はナズちゃんと星ちゃんが混ざったぬえの力で、どんどんぬえの割合が増加しているんだ。もちろんぷにぷにも標準搭載だけどね。そして今も新たに種が連れ込まれて僕達とHなことしてるんだよ。うんうん、素晴らしいことだよね。ねぇどんな気持ち? ナズちゃんと星ちゃんから生まれた子供が、この国を滅亡に導いているんだよ? しかもよりによって可愛い男の子の姿で誘っちゃうんだ。耐えられない? でも輪廻は巡るんだ。自業自得だよ? ふふふっ、また出しちゃったね。うーんもうお腹いっぱいだし。一回出さないともう入らないよ……。ちょっと待っててね、すっきり出したらまた入れさせてあげるから……。今度はどんな子が生まれるかなぁ? ナズちゃん? それとも星ちゃん? それとも――僕かな? ねぇ僕は君からはどんな姿に見える? 悪魔? 天使? どっちでもいいしどっちでもあるよ……。あん赤ちゃんが僕のお腹を蹴ったよ。いっぱい入れたから何匹育ってるかな? 楽しみ楽しみ……」
ぬえは膨れ上がったお腹をポンと叩いて優しく撫でさすった。
増える時に増やさなければ、いつ天災に見舞われれるかわからない。
正体不明の種は今日も増え続ける。
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